財務省が発表した平成25年度の経常収支は黒字幅の縮小傾向が鮮明となった。日本企業が生産拠点を海外に移す産業構造の変化が進み、円安が輸出拡大につながりにくくなったためだ。この傾向は26年度以降も続くとみられ、政府は輸出以外の“稼ぎ頭”の育成に向け、本腰を入れる必要性に迫られている。
25年度の日本経済は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」による円安・株高が進行。政府は当初、輸出産業を中心に国内企業の業績が回復し、経常黒字が拡大すると見込んでいた。
だが、原子力発電所の停止に伴う火力発電用燃料の輸入価格が円安で大きく膨らんだ。一方で、国内企業の生産拠点の海外移転により、円安ながらも輸出は伸びを欠いた。内閣府によると、24年度の製造業の海外生産比率は過去最高の20・6%にのぼり、昨年度も国内回帰の動きは鈍いままだ。
現在、日本の経常黒字は、海外への投資などから得られる所得収支の黒字で支えられている。だが貿易赤字がこのまま拡大すれば、中長期的に経常赤字へ転落するシナリオも現実味を帯びる。財政赤字の出口が見えない日本は、経常赤字が続けば国の借金を国内資金だけで賄えないと市場からみなされ、日本国債が売られて金利が急上昇する恐れもある。
貿易収支の改善が見込めない中、経常黒字を維持するには、貿易以外の収益源確保が急務だ。企業の海外投資を活性化して所得収支を増やすほか、サービス収支に寄与する観光立国政策を進めるなど、官民を挙げた「輸出依存」からの脱皮が求められる。(佐久間修志)