高尾紳路新十段(37)がタイトルを奪還した第52期十段戦五番勝負。第3局は長野県大町市で行われるのが恒例で、21年連続開催だった。直前にはアマ大会も実施され、大人を破って小学2年生が準優勝した。
3月29日に行われた第10回アルプス囲碁村十段戦には、大町市とその周辺に住む小学生から80代までの愛好家58人が参加した。上位3人へのごほうびは、十段戦前夜祭(4月9日)に招待され、プロ棋士と対面できることだ。今年2位に入ったのが、最年少8歳の北沢明良大(あらた)君。対局者の棋力差によって石を置くハンデ戦形式で、5人に勝利。1級で申し込み対局したが、3年生になった現在では初段の力があると認定された。
「相手の石を取るのが楽しい。みんなと一緒にできるのも面白い」と話す明良大君は、結城聡前十段(42)らと笑顔で写真に収まっていた。市内の幼稚園・保育園では囲碁の前段階である「石取りゲーム」を日課に採用しており、そこからのめり込んでいったという。
「囲碁による街づくり、人づくりを目指しています。礼に始まり礼に終わる囲碁は、相手への思いやりを身につけ、豊かな感性をはぐくんでくれるはず」と話すのは同市の牛越徹市長(63)。大町市や秋田県大仙市など10市1町は毎年、囲碁サミットを開催、囲碁の普及についても話し合っている。頭が柔らかい幼少期に、遊びの一種として囲碁を体験させるのも、長く親しむために効果的な方法かもしれない。(伊藤洋一)