現在の日本は多くの問題を抱えていますが、とりわけ安全保障の問題について重大な岐路に立たされています。中国、北朝鮮の軍事的な圧力はますます強まりつつありますが、日米安保条約はかつてのような絶対的な実効性が失われています。
◆絶対的平和主義の「空想」
日本の安全保障については、これまで絶対的平和主義か、現実主義かという形で議論がなされてきました。絶対的平和主義は、非武装を主張します。そして、自衛戦争も含めて戦争そのものを否定します。このような国は世界に存在しませんので、絶対的平和主義は、日本を「異質の国」にしようとしているものとみることができます。
これに対して現実主義は自衛のための戦力、自衛戦争を肯定しますが、「国家」についての明確なイメージをもたないことから重大な妥協を安易におこなっています。その例として、(1)集団的自衛権の否定(2)自衛隊の海外における軍事活動の否定-を挙げることができます。(1)は、日米安保条約の実効性を弱いものにしています。(2)については、湾岸戦争のさいに、世界の常識からかけ離れていることが明らかにされました。(2)の方針によれば、明らかな侵略戦争がおこなわれている状況の下においても、日本は軍事的な形で国際協力をすることができないということになります。