痛ましい事故は私たちに大きな教訓を与えた。しかし、その代償はあまりにも大きい。韓国の旅客船事故のニュースで、船内で先生からのメールを読み上げる子供の映像があった。「エィドゥル、ケンチャナ?」。文字通り訳せば子供たちよ、大丈夫か?だ。エィドゥルは愛情がこもった呼びかけ方だ。子供はすぐに先生も大丈夫?と打ち返していた。その子は亡くなったという。緊迫した船内で、互いに気遣う交信に言葉もない。
事故の前、今年3月に韓国のソウルを訪れる機会があった。広島大学の栗原慎二教授と韓国の学校現場の生徒指導の現状を視察するためだった。今回の事故の報に接し、改めて韓国の学校の先生方のことを思い出した。
現在、韓国の学校では、小学校は5学年、中学では2学年の指導が難しいとされている。「北朝鮮は、韓国の中2が恐ろしくて攻めてこられない」という言葉が生まれたほどだ。疲れきった教師の精神疾患による休職や早期退職が増えている。先生の苦労は日本も韓国も一緒だ。
韓国では学校生活に適応できない子供のための教室を校内に設けた。新たに相談専門教諭という資格もつくられた。教員免許を持った者がさらに120時間の生徒指導の研修を受ける。