作家、平野啓一郎さん(38)が国立西洋美術館(東京・上野公園)の所蔵コレクションから自由に選んで企画編集した展覧会「非日常からの呼び声」が、同館で開かれている。
小説家らしく、全体としてストーリーを語る展示を意識したという。まず自分が素晴らしい、面白いと思うものを選び出し、結果として浮かび上がってきたテーマが「非日常からの呼び声」。展示に当たっては「作品ごとに緩やかな関連性を持たせた。物語をたどるように絵を見てほしい」と語る。
全体は6章立て。1章は「幻視」として、目が驚きとともに瞬間的にとらえる不思議な光景を集めた。例えば、迷い込んだ森の先に広がるような、クロード・ロラン(17世紀、フランス)の「踊るサテュロスとニンフのいる風景」。一方、2章「妄想」は時間とともに蓄積、膨張していくイメージ。代表するのがフランシスコ・デ・ゴヤ(18~19世紀、スペイン)の「飛翔(ひしょう)法」(版画連作「妄」より)だ。「鳥のようですけどガにも見える。滑稽かつ気持ち悪い。空を飛ぶ晴れやかさがない、暗い妄念の中で浮かび上がるような光景」と平野さん。
3章は“究極の非日常”としての「死」。そして死から生へ呼び戻すための4章「エロティシズム」、神という超越的存在に救いを求める5章「彼方(かなた)への眼差(まなざ)し」と続く。