【湯浅博の世界読解】強いオバマになれるか | 毎日のニュース

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 果たして、超大国を率いる大統領は「弱いオバマ」から脱したのだろうか。この2月以来、米政府高官が東シナ海や南シナ海で沿岸国を強制力によって恫喝(どうかつ)する中国を、強く牽制(けんせい)するようになった。とりわけ、ロシアによるウクライナ介入を「クリミア・モデル」として、東アジアでも中国による領土奪取の先例になるとの警戒感が強い。

 それはオバマ政権の対中政策の軌道修正なのか。あるいは、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に直面したカーター政権のように、戦略転換に踏み切る予兆なのか。沖縄県の尖閣諸島周辺海域で中国の攻勢にさらされる日本としては、近く来日するオバマ大統領に「あなたは強いカーターになれるのか」を問いたい。

 1970年代のカーター政権も、経済苦境の中で米ソ冷戦の緊張緩和時代を迎えていた。だが、宥和(ゆうわ)政策の影で起きたのはソ連の軍拡であり、イランの米大使館人質事件であった。

 そしてカーター政権に戦略転換を決断させたのは、79年12月のソ連によるアフガン侵攻である。カーター大統領はそれを「平和への最大の脅威だ」と宣言し、対ソ禁輸措置を断行し、若者に徴兵登録を求め、80年のモスクワ五輪をボイコットした。侵攻から1カ月後には、向こう5年間、毎年国防費を4%以上増大させることを決断している。

 オバマ大統領は昨年秋、シリアのアサド政権が化学兵器を使ったとして軍事攻撃を宣言しながら取りやめ、ロシアの仲介に依存して、「米国は世界の警察官ではない」と演説した。「オバマ弱し」と受け取ったロシアはクリミア半島を併合し、中国は尖閣諸島を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定して領空なみの義務を課したのだ。