--新たな「エネルギー基本計画」が11日に閣議決定された
「不確実性、複雑性が拡大する世界のエネルギー事情の中で、政府にはエネルギー政策に可能な限り大きな方向性を示す必要があった。原子力をベースロード電源と位置付け、必要な政策も示した点は評価できる。ただ、電源構成の数値目標を見送ったことは、原子力活用などのマグニチュード(大きさ)も分からず、課題を残した」
--適正な電源構成は
「原子力にしろ、再生可能エネルギーにしろ、すべてのエネルギーは完璧ではない。3・11以降求められる『安全・安心』を軸に、安定供給、経済性、環境適合性の3つのバランスを図るエネルギー政策は、複数の連立方程式を解くように容易ではない。原子力か再生エネかといった短絡的な選択ではなく、化石燃料も含めてそれぞれの特性、リスクを考慮し、バランス良い構成を考えていくしか道はない」
--原子力の位置づけは
「個人的には総発電量のうち原子力で20~25%が必要と考える。エネルギーのコストや安全保障、地球温暖化などへの対応を考えると、日本は原子力なしに対応できない。そのためにも福島の避難者の早期帰還を実現し、原子力の安全性への国民の信頼を取り戻さなければならない」
--国民の信頼回復には 「原子力に対する『技術』『制度』『文化』の3つの面で国際標準に達しなければならない。日本は、技術は世界最高水準にある。しかし、3・11前は制度、文化が国際標準に未達だった。安全規制が進化することを忘れ、対応を怠った。この3つがそろえば、欧米と同様、事故への備え、安全への信頼も醸成され、国民の原子力支持は高まろう」 (鈴木伸男)
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【プロフィル】豊田正和
とよだ・まさかず 東大法卒。プリンストン大学行政大学院修士。昭和48年通商産業省(現経済産業省)入省。通商政策局長、経済産業審議官を経て平成20年退官。22年7月から現職。64歳。東京都出身。