【忘れない~東日本大震災3年】ボロボロになったはんてん 「父に代わってすべてを守る」 | 毎日のニュース

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 あの日を境に、被災者の人生は大きく変わった。父を失った岩手県田野畑村の会社員、佐々木駿也(しゅんや)さん(23)は、夢をあきらめ、家族と地元のために暮らす道を選択した。後悔はない。「父に代わってすべてを守る」。11日の村の追悼式では、遺族代表としてその歩みを振り返った。

 消防団員で漁協職員だった父、卓也さん=当時(46)=は震災時、いったん帰宅し、家族に逃げるよう指示した。自らは消防団のはんてんを着て港に向かった。水門を閉め、船を係留しているうちに逃げ遅れた。その途中、避難所の小学校に誰でも使えるように、自らの大きな乗用車を運んでいた。「優しい父が誇りでした」

 当時、駿也さんは盛岡市内の専門学校に通い、キックボクシングに没頭していた。プロの道を夢見ていたのだ。震災翌日に地元に戻り、2日後に遺体安置所で父と対面した。ボロボロになったはんてんを見て「心が引き裂かれそうになった」と振り返る。

 大黒柱を失った家庭には、祖母と母、10歳違いの幼い弟。「家族の支えになれるのは、もう自分しかいない」。夢を絶って地元に戻る決断をした。