「小説家は幸福な職業か?」 芥川・直木賞150回記念で道尾、綿矢両氏対談 | 毎日のニュース

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 150回の節目を記念した「芥川賞&直木賞フェスティバル」が1、2日に東京都内で行われた。イベントのトップを飾った「小説家は幸福な職業か?」と題した対談では、芥川賞作家の綿矢りささん(30)と、直木賞作家の道尾秀介さん(38)が創作の舞台裏などを語り合った。

 互いに質問を投げかける形でトークは進んだ。道尾さんに、年齢も性別もさまざまな小説のキャラクターづくりの秘密をたずねられた綿矢さんは「自分の中にある少年的なものや老人的なものを誇大化させる。ちょっと会った子供とかを思い浮かべて書くというのは難しくて、『自分が子供だったら』と考えて架空の世界に行く」と話した。さらに「雑に扱うと、書いている途中に頭の中でその人が無表情で振り向くときがあって怖い」と、意外な挿話も披露した。

 一方、綿矢さんは道尾さんにミステリー小説の伏線の張り方を質問。「スタートとゴールは明確で後はぼやっとしている。書きながら考えていく」。そう答えた道尾さんは「読んだ人のために文章全部に無駄なく意味をもたせたい。それが伏線になるパターンが多い」と作家としてのサービス精神を見せた。

 本題の「小説家の幸福」に話が及ぶと、道尾さんは「どの作品も書き上げた瞬間をしっかり覚えている」と仕事の充実感を口にし、綿矢さんも「書き終わったときに『抱えていたものが大きかったんやな』ってようやく気づく。爽快感があります」とうなずいていた。

 若い世代に人気の作家同士の対談とあって、用意された50席に11倍を超える事前応募が寄せられ、立ち見が出る盛況ぶりだった。(海老沢類)