【ソチ=榊輝朗】演技を終えた瞬間、金メダルを確信していた。ボロソジャルは顔を覆って感極まり、トランコフは雄たけびをあげた。圧勝で頂点に立った。「幸せ。ロシアに金メダルを取り戻したわ」。ボロソジャルは“仕事”を成し遂げ、歓喜に酔った。
フィギュアスケートのペア。前回バンクーバー五輪で、ロシアの連勝が「12」で止まった。地元開催の五輪では、金メダル奪還が至上命題だった。「国中が望んでいたことだ。重圧はあったけど、成し遂げられて誇りに思うよ」。トランコフは胸を張った。
完璧だった。滞空時間の長いツイスト、精密機械のように息が合ったスピン、高く安定したリフト…。「いい演技ができたわ」とボロソジャル。ペアならではの魅力あふれる滑りをリンクに描き続け、最後は地鳴りのような歓声を誘った。
強い精神力も見事だった。地元の期待を一身に背負い、ボロソジャルは「とても厳しい戦いだった」と明かした。SPでは世界歴代最高を更新する84.17点を記録、この日のフリーもミスのない演技を貫き、のしかかる重圧を跳ね返した。
バンクーバー五輪後にペアを組み、短期間で快挙を成し遂げた。4年後に韓国で開かれる平昌五輪について問われたトランコフは「さよならを言うつもりはない」と言い切った。もちろん、韓国でも今大会同様、団体との2冠を思い描いている。