【家庭医が教える病気のはなし(40)】捏造論文利用するワクチン反対派 | 毎日のニュース

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 今回は、ワクチンにまつわる論文が捏造(ねつぞう)された話を紹介したいと思います。

 ワクチンについての捏造論文は1998年、医学雑誌『ランセット』に発表されました。この雑誌は、論文捏造で問題になっている高血圧薬「ディオバン」の論文が掲載されたのと同じ雑誌ですが、医学の世界では権威のある雑誌とみなされています。

 発表された論文は「麻疹、風疹、おたふくの3種混合ワクチンによって自閉症が引き起こされる」というものでした。12人の自閉症患者を調査したところ、8人がこの3種混合ワクチンを受けているという結果から導き出した結論でした。

 この論文の影響は世界に大きな影響を与えました。論文発表前、90%を超えていたイギリスのワクチン接種率が、発表後は60%にまで低下したと報告されています。

 その後、この論文は捏造であったことが明らかとなり、2010年には撤回されました。著者のウェイクフィールドは医師免許を剥奪(はくだつ)されています。

 この結果がでたらめであることは別の研究でも明らかです。02年に医学雑誌『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』に掲載された論文で、ワクチン接種者44万人と非接種者9万人以上を比較したところ、自閉症の発症率はむしろワクチン接種者で低く、統計学的な差がないことが示されています。数十万人規模で比較対照を持つ研究と、12人で比較対照を持たない研究のどちらが信用に足るかは論じるまでもないでしょう。