空から降るミュー粒子で原子炉内透視へ 東電、来年にも調査 | 毎日のニュース

毎日のニュース

今日の出来事をニュース配信中!

 上空から地上に降り注ぐ素粒子が核燃料に当たって方向が変わる現象を利用し、東京電力福島第1原発で炉心溶融(メルトダウン)を起こした原子炉内部を透視する計画が進んでいる。東電は平成32年の溶融燃料取り出し開始を目指すが、来年にも検出器を設置し、調査に入る。内部の状態が正確に分かれば、廃炉作業も加速しそうだ。

 もともとは米ロスアラモス国立研究所(ニューメキシコ州)が核テロ対策のために開発した技術で、福島第1原発の事故を受け、東芝と東電が研究を進めてきた。透視に利用する素粒子は宇宙から飛来する陽子(水素の原子核)などが上空の大気に衝突してできる「ミュー粒子」。地上には1平方メートル当たり毎分約1万個が降り注いでいて、物質を透過する能力が高い。ミュー粒子は核燃料に含まれるウランを通過する際に角度が数度変わる。2台の検出器で原子炉に入る前と出た後の粒子の軌跡を解析すると、燃料の位置や形が立体的に分かる仕組みだ。

 昨年夏、川崎市にある東芝の研究炉を使い、第1原発の約10分の1の規模で試験した。4時間で燃料のおおよその形が浮かび上がり、約1カ月間、データを取り続けると円筒形の燃料を鮮明に画像化することができた。

 ロスアラモス研究所での開発段階から携わってきた東芝電力・社会システム技術開発センターの宮寺晴夫さんは「試験では3センチほどの物体を見分ける解像度があった。第1原発では解像度が30センチ程度になる」と語る。第1原発での観測には1~3カ月かかる見通し。宮寺さんは「現場の放射線はミュー粒子検出の妨げになる。放射線を区別できるよう検出システムの改良を急ぎたい」と話している。

 ミュー粒子を利用した同様の研究は、高エネルギー加速器研究機構や筑波大などのチームも進めている。