エジプト改憲案 国民投票 軍中心の体制回帰へ 薄まるイスラム色 | 毎日のニュース

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 【カイロ=大内清】昨年7月の軍クーデターで憲法が停止されたエジプトで14日、暫定政権主導で起草された改憲案の賛否を問う国民投票が2日間の日程で始まった。同案は軍権限を強化し、モルシー前政権下で制定された旧憲法よりイスラム色を薄めた内容。同国ではモルシー前大統領を失脚させた軍を礼賛する空気が強く、承認はほぼ確実な情勢だ。軍は政治に事実上の“拒否権”を持つこととなり、今後は軍中心の権威主義体制への回帰がさらに進むとみられる。

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 14日、低所得層が多い首都カイロ・インババ地区の投票所で「賛成」を投じたムハンマド・アブドルラジクさん(27)は「軍が国を良い方向に導いてくれる」と力説した。

 同地区では同日朝、小規模な爆発が発生。背後関係は不明だが、有権者は「モルシー派の妨害に違いない」と口をそろえ、軍主導の国内安定化にいっそう期待を強めていた。各地でモルシー派と治安部隊などの衝突も起き、少なくとも4人が死亡したもようだ。

 改憲案は国防相のポストについて本格政権移行後の2期8年間は軍幹部が過半数を占める会議で指名すると明文化しており、軍の意向に反する組閣は事実上、不可能となる。また、軍が「直接の攻撃」を受けた場合、市民も軍事法廷で裁くことができると規定。軍が混乱した政治・社会に「にらみ」を利かせる形だが、行政や司法分野にまで軍の干渉が及ぶ恐れもある。