「抗菌」をうたったせっけんは、通常のせっけんより病気の予防や感染防止の効果があるのか-。FDA(米食品医薬品局)は昨年暮れ、抗菌せっけん(薬用せっけん)の製造業者に対し、効能を裏付けるデータの提出を義務付ける方針を明らかにした。日本でも風邪やノロウイルスなど感染症予防に薬用せっけんの使用が勧められるが、実際はどうなのだろうか。(平沢裕子)
◆40年前から使用
FDAが抗菌せっけんの効能データを求めることにしたのは、米国で抗菌せっけんの健康に及ぼす影響について懸念の声が上がっていたことがある。抗菌せっけんにはトリクロサンやトリクロカルバンなどの化学物質が含まれているが、動物実験でこれらの物質がホルモン分泌に影響を与える可能性が指摘されている。
トリクロサンは歯磨き粉や掃除用洗剤などにも使われる抗菌物質で、トリクロサンを含むせっけんは米国では40年以上前から市販されてきた。毒性に関するデータも比較的豊富で、これまで特に問題となることはなかった。
日本ではトリクロサンを含むせっけんは「薬用せっけん」に分類され、「医薬部外品」としてさまざまな種類が市販されている。トリクロサンは厚生労働省が抗菌効果を認めている物質で、一定の濃度が含まれていれば商品に「殺菌」や「消毒」をうたうことができる。