なぜ「国防の義務」ないのか
前回は自由主義国の憲法に「勤労の義務」が規定されるのは異例なこと、他の国の憲法ではその代わりに「国防の義務」が規定されているが、日本国憲法にはその規定がないのも異例であると指摘しました。実際、他の国の憲法には決まって国防の義務ないし兵役の義務が規定されています。
他国の例は
・ドイツ連邦共和国基本法第12条a「男子に対しては、満18歳から軍隊、連邦国境警備隊、または民間防衛団における役務を義務として課すことができる」
・イタリア共和国憲法第52条「祖国の防衛は、市民の神聖な義務である」
・中華人民共和国憲法第55条1項「祖国を防衛し、侵略に抵抗することは中華人民共和国のすべての公民の神聖な義務である」
・大韓民国憲法第39条「すべて国民は、法律の定めるところにより、国防の義務を負う」
他の国の憲法が国民に国防の義務ないし兵役の義務を課すのは、近代の国家が「国民国家」という性質を持つ存在だからです。「国民国家(nation state)」には大きく2つの意味があります。