製薬会社「ノバルティスファーマ」(東京都港区)が販売する降圧剤「ディオバン」(一般名・バルサルタン)の臨床研究データ操作問題で、厚生労働省は9日、データ改竄(かいざん)を知りながらノ社が論文を宣伝に使ったとして、薬事法違反(誇大広告)の罪でノ社と当時の社員を容疑者不詳のまま東京地検に刑事告発した。日本の臨床研究への信頼を失墜させた不祥事は、広告をめぐって製薬会社の刑事責任の有無が問われる事態となった。
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厚労省によると、ノ社は「ディオバンは血圧を下げる効果に加え、脳卒中などを防ぐ効果が高い」とする東京慈恵医大と京都府立医大の臨床研究論文のデータが改竄されていることを知りながら、平成23~24年にかけて広告に引用し、誇大宣伝した疑いがあるとしている。
2大学にはノ社の元社員が身分を隠してデータ解析などに加わっており、論文のデータは操作されていたことが各大学の調査で判明している。
厚労省はノ社から資料の提出を受けたうえ、関係者から任意聴取するなどして調査。実際に誇大な広告をした社員は特定できなかったが、「調査の過程で薬事法違反の疑いが強まり、実態解明には刑事捜査が必要と判断した」という。
告発を受け、ノ社は「患者、医療従事者、国民の皆さまにご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げる。事態を極めて重く受け止め、これまで同様に今後も当局に全面的に協力していく」とのコメントを発表した。