【鑑賞眼】中島みゆき「夜会工場VOL.1」 輝く美貌とユーモア | 毎日のニュース

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 平成元年から続けている音楽劇「夜会」の総集編。17回分の公演から選んだ24曲を披露した。「夜会」が作られる工場に見立てられたステージに、中島みゆきは地味な作業服を着て姿を見せた。「産声」を情熱的に歌い上げる。低音が力強く、胸に迫ってくる。

 ステージ中央にすっと立つ中島。左右の黒子が作業服を引っ張ると、目にも鮮やかな赤いドレスに早変わり。何度も衣装を替えたが、この瞬間が一番ドラマチックだった。

 「キツネ狩りの歌」では淡い青色のコートを羽織って登場した。ちょっとコミカルで楽しい歌。表情も生き生きしている。その姿は童女のよう。

 「SMILE,SMILE」では、ピンクの恐竜のような着ぐるみ姿での登場。歌いながら何度か転ぶのだが、演技で転んでいるのか、本当に足がもつれたのか判然としないほど自然だった。

 圧巻は「らいしょらいしょ」から「都の灯り」にかけてだ。手まり歌から始まる。中島は実際にステージ上でまりつきに興じる。童歌はだんだん雰囲気を変え、情念の歌になってゆく。どこかで火事。すると中島は、大きな消火器を抱えて歌う。表情はまじめそのもの。そのアンバランスな感じが笑える。

 年齢のことをいうのはやぼかもしれないが、61歳の中島の美貌が輝くステージだった。そこに三枚目の表情を挟むユーモア感覚に脱帽。11月25日、東京・赤坂ACTシアター。(櫛田寿宏)