【2013文化部記者のベスト3】映画愛にあふれた日本映画編 珠玉の「ハーメルン」に涙 | 毎日のニュース

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 平成25年もすてきな映画がたくさん封切られた。あらゆるジャンルから選ぼうとすると、あれもこれもと迷ってしまい、とうてい3本には収まらない。

 ということで、「映画愛にあふれた日本映画」というくくりでベスト3を選び出してみた。いずれもカメラや映写機、映画館が重要なアイテムとしていい味を出している作品だ。

「ハーメルン」坪川拓史監督

「地獄でなぜ悪い」園子温監督

「旅する映写機」森田惠子監督

 「ハーメルン」は福島県の奥会津地方を舞台に、廃校となった小学校の過去と現在とが交錯する作品で、主人公の心象風景と奥会津の自然とが珠玉の映像でつづられる。その思い出を演出する小道具として、8ミリカメラや古い映画館が実に効果的に登場する。

 中でもラストの8ミリの使われ方がすばらしい。小学校の校庭には立派なイチョウの木がそびえているのだが、この小学校に暮らしている元校長(坂本長利)が8ミリカメラでイチョウの木を撮影しながら涙を流し、その映像を主人公(西島秀俊)が部屋の壁に映写しながら涙を流す。さらにわれわれ観客もそのシーンを目にして思わず涙がこぼれるという具合で、美しいものを映像で残すという行為がこんなにも感動を呼ぶということに驚かされる。映画の力を再確認できた作品だった。

これと対極的ながら、やはり映画愛に満ちていたのが「地獄でなぜ悪い」だ。やくざの出入りを映画にするという場面がミソとなる作品で、芽が出ない自主映画監督(長谷川博己)、お飾りの監督に祭り上げられた青年(星野源)、娘を主演女優にしたい親分(國村隼)らが入り乱れて映画の撮影に突入する。映画に対するスタンスは各人各様だが、いずれも映画に心奪われており、その描き方が映画好きにはたまらない。