2013 今年、私の3冊 | 毎日のニュース

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 今年最後の読書面は“特別編”。名うての読み巧者7人に「2013 私の3冊」を選んでいただきました。

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■千駄木・往来堂書店店長 笈入建志(おいりけんじ)

〔1〕『失踪日記2 アル中病棟』 吾妻ひでお著(イースト・プレス・1365円)

 〔2〕『やさしさをまとった殲滅(せんめつ)の時代』 堀井憲一郎著(講談社現代新書・777円)

 〔3〕『自殺』 末井昭著(朝日出版社・1680円)

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 〔1〕 アルコール依存症を克服したマンガ家による自身の入院の記録。それは不治の病で、回復しても適量のお酒を楽しめる、つまりお酒を飲める体には戻れないとは知らなかった。酒を抜いたあと自分の中にぽっかり空いた空洞を、何かで埋めなくては人は生きてはいけないということは、みな何かに依存してどうにか生きているということではないのか。

 〔2〕 インターネットの通信回線がどんどん快適になり、携帯電話が一人一台にまで普及して、私たちは新しいつながりや連帯を手に入れた、のではなく、徹底的にバラバラになってしまった。一見便利な物ばかりに囲まれている生活の、言葉にしにくい息苦しさを指摘している。

 〔3〕 交通事故による死者よりも、大震災と津波による死者よりも、毎年の自殺者のほうが多い日本。競争社会の中で居場所をなくし孤独に苦しんでいる人に目を向けるよりは、株価を上げたりオリンピックを呼んだりするほうが自殺者の数は減るのだろうか。