北朝鮮の張成沢(チャン・ソンテク)氏と張派の粛清を受け、中朝の経済関係に深刻な影響が出始めた。粛清の余波で、北朝鮮が中国に輸出した鉱物などの売掛金計約10億ドル(約1050億円)の支払いが停止状態に陥っているともされる。金正恩(ウン)(キム・ジョンウン)政権は急場しのぎに国民からの徴集を強めるなど、経済悪化を加速しかねない事態を招いているという。(桜井紀雄)
傾いた北朝鮮経済の「命綱」といわれるのが、石炭や鉄鉱石といった鉱物の対中輸出だ。特に対中貿易の権限の大部分を握った張氏の号令で輸出が急増。石炭だけで2000年半ばに200万~300万トンだった輸出量は11年から1100万トンを超え、昨年の輸出額は約12億ドルに上った。
年末の決済期に入ってこの「ドル箱」の支払いに異変が起きた。正恩政権は張氏処刑で「石炭など貴重な資源をむやみに売り飛ばした」と断罪。貿易に携わってきた張派関係者が一斉に姿を消したからだ。
「契約した担当者のサインがなければ、支払えない」。中朝関係者によると、北朝鮮側企業に対して中国側企業が「担当者不在」を理由に支払いを保留し、未決済額は海産物輸出なども含め、計約10億ドルに上るとみられている。