【衝撃事件の核心】春日部特養ホーム 市のずさん調査で捜査難航 被告の「二面性」 | 毎日のニュース

毎日のニュース

今日の出来事をニュース配信中!

 周辺はのどかな田園風景。入所者の女性たちは手厚い介護を受けながら限られた余生をゆったりと過ごしていくはずだった…。埼玉県春日部市一ノ割の特別養護老人ホーム「フラワーヒル」で平成22年、女性入居者の死傷が相次いだ事件。施設や市は、虐待の疑いを把握しながら警察に事実上「丸投げ」していたことが分かってきた。だが、そのときはすでに遺体は荼毘に付されていた。「検証しようにも遺体がない…」。市などのずさんな対応で一度は闇に埋もれかけた事件の全容が、少しずつ判明しつつある。

 事件は平成22年2月15~18日に発生。わずか4日間に78~95歳の女性入所者3人が死亡し、1人が胸やあごに大けがを負った。

 だが、捜査関係者は一様に、立件の難しさに顔をしかめた。「虐待が疑われる」として県警が春日部市から通報を受けた同月20日の時点で、施設で死亡した死者3人の遺体はすでに荼毘に付されていたからだ。

 当然、遺体の司法解剖もできない中、県警は当時のカルテや診察記録などを精査し、CTスキャンの画像解析に精力を注ぐなど粘り強く捜査を継続。元職員の大吉崇紘(おおよし・たかひろ)被告(29)が入所者を死傷させた疑いが強まり、慎重に裏付けを進めていく作業が続いた。