【マニラ=吉村英輝】台風30号がフィリピン中部を直撃して11日で4日目となったが、被害の全容はつかめず犠牲者は日を追うごとに増えている。フィリピンの地元紙などによると、暴風雨と高潮で倒壊した住宅の残骸や、がれきであふれる被災地では、食料不足による略奪が横行しているもようだ。空腹でいらだつ住民同士による暴力や殺人が懸念されはじめている。
「これは夢なの? 映画なの?」
壊滅的被害を受けたレイテ島のタクロバン市。高潮から逃れて屋根の上に避難していた市長夫人は、涙をぬぐいながらこうつぶやいた。
島内の軍用空港には飲料水を求める住民らの長蛇の列ができた。食料不足はかなり深刻な様子で、その影響が出始めている。
「みんな暴力的になっていて、商業施設やショッピングモールで食料を略奪している。1週間もすれば、飢えによる殺人も起こりそうで心配だ」。タクロバン市の公立学校の教諭(36)はこう語った。
英紙タイムズによると、10日夜、赤十字社の車両が暴徒に襲撃され、被災者のために運んでいた食料品や医薬品を略奪される事件が起きた。