■時代小説でも“ワールド”健在
「初めて&これっきり」という時代小説でも、日常と非日常が同居する通称“万城目ワールド”は健在。
「いや、じつは最初、そういうものはなしでいこうと思っていたんですけど…だめでしたね、早々に『ひょうたん』を出してしまいました。するとこれが不思議なことに、さあっと道が開けたような、いくべき所に光がぽーんと射すような、もちろんストーリーが全部決まったわけではないんですけど、なんというか、心に余裕が出てきまして(笑)」
それでも、自分自身で思っていたよりは「ハチャメチャにならなかった」のは、読書体験のせいだという。中学や高校のころ、よく読んでいたと挙げてくれた作家は、吉川英治、山岡荘八、司馬遼太郎…。
「スタンダードな時代小説、歴史小説を読んできたので、しつけられてしまったんですね。カタカナ使わないとか、史実は変えないとか、見た目と姿勢は“昭和のルール”にのっとってます。しゃべり言葉とかは全然勝手なことやってますけど」
戦乱の世は去り、天下は豊臣から徳川へ移ろうとしていた。伊賀を追い出された“ニート忍者”の風太郎(ぷうたろう)は、京都でぶらぶらとその日暮らしを送っていた。しかし、不思議な「ひょうたん」が、彼を再び死闘へいざなっていく。炎上する大坂城での最終決戦。決着はいかに-。