黒 二 段 石井 茜
白 六 段 加藤 啓子
【101~200】持ち時間各3時間
先番(黒)6目半コミ出し
【棋譜欄外】50コウ取る(46)、53同(41)、56、59、62、65、68、71、74、77、80、83、86、89各同
【参考図欄外】26コウ取る(23の左)
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対局日(8月8日)の東京都内は猛暑がぶり返していた。加藤啓子六段(35)と石井茜二段(31)は髪をうしろでまとめ涼しげな服装だ。加藤六段は長身のため目立たないが、溝上知親八段(夫)との第2子を11月に出産予定。体調管理に気をつけて、リーグ戦を乗り切らなくてはならない。
この日は隣室で女流本因坊戦準決勝が行われていた。リーグ戦在籍の鈴木歩六段、向井千瑛五段、知念かおり四段に加え、関西棋院から田村千明三段が参戦。石井二段は先輩の田村三段と連れ立って、昼食に出かけた。
前譜まで黒は地合でリードしているが、下辺から中央の黒大石の眼形がはっきりしていない。しかし「大石死せず」の格言があるように、石井二段はこの時点で、シノギには十分自信があったようだ。
白2以下8まで、しゃにむに黒の眼を奪いに行く加藤六段。
対する黒11のノゾキが鋭い。攻められながら、逆に白大石の眼を脅かしている。
ここで残り3分の秒読みに追われながら、黒19のノビキリが度胸満点の急所だった。白は当然20、22と切断。果たして黒大石の生きは?
白はまだ30分を残している。大石の死活に関する難所で、この持ち時間の差は大きい。
「黒31のカケで参った」と局後に加藤六段。右辺の白大石は息の根が止まった。
「白34では参考図、白1が粘りのある手。以下難しい手順ですが、白aハネダシの味を封じて、黒4と白を取り切るのが肝心。白25までコウには持ち込めますが、黒はソバコウが多くシノギ形」と解説の楊嘉源九段。さらに「黒41では91、白92、黒93、白98、黒A、白B、黒95なら黒の無条件生き。途中の白98で95なら黒B、白A、黒97、白C、黒Dでセキになります」と続けた。石井二段はこの後、黒91、白92、黒93と生きるチャンスをことごとく逸した。
黒93にへこむ筋は、詰め碁として出題されていれば容易に気がついたはず。しかし残り1分の秒読みは、石井二段を泥沼へ引きずり込んでいった。決着は次譜で。(伊藤誠)