とどめを刺された後半ロスタイムの失点に、日本の選手たちはがっくりとうなだれた。好機の数ではセルビアを上回りながら得点できず、逆に要所を逃さない相手の巧みな試合運びに翻弄された。敵地とはいえ、W杯出場を逃した欧州の中堅国に歯が立たず、長谷部は「これくらいのチームはW杯ならいくらでもいる。しっかり受け止めないと」と唇をかんだ。
相手MFスタンコビッチの引退試合という側面もあった一戦。試合前のセレモニーと、開始10分で退いた元主将を両チームで整列して送り出す「非日常」が尾を引いたのか、「立ち上がりは試合に入り切れていなかった」(香川)。それでもパス主体の組み立てから徐々にリズムをつかみ、前半30分過ぎに香川、後半早々にも柿谷が絶好期を迎えた。だが直後の相手FKで流れは一変。長身選手めがけてほうり込むだけでなく、意表をついて短くつなぐ攻撃パターンは把握済みだったが、矢継ぎ早の展開に最終ラインが下がった隙を突かれ、先制を許した。
その後は攻める日本と耐えるセルビアの「我慢比べ」(今野)。日本はサイドを活用して切り崩しに懸かったが、ゴール前に人数をかけたセルビアの守備網を破断できず、試合終了間際には細貝の甘いパスをカットした相手の逆襲に抗しきれなかった。「セットプレーとカウンター。教科書通りにやられた」と内田。欧州、あるいは世界での立ち位置を思い知らされる屈辱の敗戦となった。(奥村信哉)