中島みゆきさん作詞、作曲の「うらみ・ます」は、一度聞いたら、忘れられない曲だ。♪うらみますうらみます あんたのこと死ぬまで。
▼愛と憎しみは、背中合わせに存在する。一度でも手痛い失恋を経験した人には、自明の理であろう。中島さんは、レコーディングで、泣きながら歌っているのではないか、とファンの間でも話題になったものだ。
▼彼女のようなシンガー・ソングライターは、人生で経験したことを昇華して、フィクションを交えて作品にしてしまう。そんな才能がなくても、人はそれを糧にほんの少し賢くなって、生きていく。それが人生というものではないか。
▼東京都三鷹市の高校3年生、鈴木沙彩さん(18)は、国際的な女優をめざしていたという。小学生時代から芸能活動を始めていた鈴木さんは、海外留学も経験して、順調にキャリアを積み上げていた。その間に出合った恋も、将来の「芸のこやし」と割り切っていたのかもしれない。
▼そんな鈴木さんの夢は、元交際相手の池永チャールストーマス容疑者(21)のナイフによって断ち切られた。さぞ、無念だったろう。中島さんには、「誰だってナイフになれる」という曲もある。といっても、あくまで切りつける相手は、人の幸せをうらやむ自分である。
▼2人は、「フェイスブック」という交流サイトを通じて知り合ったという。小欄はまったく不案内だが、付き合いが終わった後でも、未練たらしく相手のことを調べる人が少なくないらしい。それに飽きたらず、遠く京都から、追いかけて凶行に及ぶとは。犯行前からストーカー被害の相談を受けていたにもかかわらず、少女を守れなかった警察の対応にも、疑問の声が上がっている。まさに、憂き世である。