政府は14日、内閣官房の有識者会議が推した「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」を、本年度に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産へ推薦する方針を固めた。9月中に暫定版推薦書をユネスコに提出し、国際記念物遺跡会議(イコモス)の現地調査を経て、2015年の世界遺産委員会で登録の可否が審査される見通しだ。
文化庁の文化審議会が選んだ「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎県、熊本県)の推薦は来年度以降になる。文化遺産への各国の推薦枠は年1件で、2候補が競合したため政府内で調整していた。
産業革命遺産は八幡製鉄所(北九州市)や長崎造船所(長崎市)など。「軍艦島」として知られる長崎市の端島炭坑など幕末から明治にかけての重工業の発展を示す20を超える施設で構成し、関係自治体は福岡や鹿児島など8県に及ぶ。(共同)
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【解説】政府が「明治日本の産業革命遺産」を本年度に世界文化遺産へ推薦する方針を固めたのは、幕末から明治にかけて急速な発展を遂げた日本の重工業の歴史に世界的な価値があると判断したからだ。
産業革命遺産を推した有識者会議は、当時の重工業が、単に西欧の技術を取り入れただけでなく、日本の伝統的技術と融合して発展した点を評価。日本の近代化の礎を築いたとした。
九州、山口を中心に関係自治体が8県11市に及ぶのも特徴だ。競合した「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」は、構成する文化財の大半が長崎県にある。
一方で課題も多い。世界遺産登録には、十分な管理保全態勢が取られていることが前提となる。しかし、産業革命遺産には、保全策が確定していない施設や、所有企業の十分な合意がない施設も含まれているとされる。(共同)