■地方発プロとアマの見事な共演
市民参加型の舞台の、一つの到達点を見た。多くの地方公共劇場関係者、ミュージカルファンに見てほしかった。富山の文化力、そしてプロとアマチュアが刺激し合った結果、市民参加型のレベルをはるかに超える「地方発」の質の高い舞台ができることを目の当たりにできたからだ。
作品は1964年、ブロードウェーで初演され、同年のトニー賞を独占した。ジェリー・ハーマン作曲の主題歌はなじみのある人も多いだろう。それをオーバード・ホールを運営する富山市民文化事業団が昨年、日本人による初演を富山でやってのけた。好評を受け今回、初の東京での再演。ロジャー・カステヤーノ、寺崎秀臣演出。
富山市出身の元宝塚歌劇団トップスター、剣幸(つるぎ・みゆき)が気のいい仲人業の未亡人ドーリーで主演し、偏屈な金持ちホレス(モト冬樹)と結ばれる幸福感あふれる舞台。44人の出演者のうち、9人が市民キャストで、オーケストラも市民による特別編成だ。
圧巻は1幕終わりのパレード。富山工業高校の吹奏楽部が、高校球児が甲子園で見せる150%プレーのような行進と演奏を見せる。そして特設の銀橋(エプロンステージ)を自在に使い、ドーリーそのものの温かい演技を見せる剣。「♪今でも輝いているまぶしく」。宝塚時代と変わらぬ輝きに胸が躍った。
次の一歩を踏み出そうとする人々の物語が、舞台に挑む市民の現実ともリンクし、挑戦するすべての人々の応援歌のような作品になった。8月23日、東京・池袋の東京芸術劇場。(飯塚友子)