東日本大震災から2年半が過ぎた。平成23年3月11日、あなたは何をしていたろう。被災地の過酷な現実を見て、何を思ったろう。
多くの人が避難と備えの重要性を再確認し、被災者との連帯や絆を強く意識したのではなかったか。その思いが、薄れてはいないか。
被災地の復興は順調に進んでいるとは言い難い。国や自治体、経済界、一般の人々を含む「オールジャパン体制」で復興の速度を高める必要がある。
地震と大津波の被害で、死者は太平洋岸を中心に北海道から神奈川県まで12都道県で1万5883人を数えた。2654人が行方不明のままだ。11日には沿岸部各地で大規模な捜索が行われた。
今も宮城、岩手、福島3県の避難者は約29万人にのぼる。このうち10万人以上が、プレハブなどの仮設住宅で不自由な生活を強いられている。その重い現実を直視しなければならない。
住宅再建の遅れは3県が共に抱える深刻な課題だ。国は県などと連携して災害公営住宅の整備に取り組んでいるが、完成したのは3県で400戸余りにとどまる。高台への移転や工事の遅れで造成がなかなか進まないためだ。
がれきの山はようやく小さくなったが、土台を残して住宅が流された荒涼たる光景は、ほとんどそのままだ。
何よりも国が前面に立ち、東京電力福島第1原発の事故処理を安全、確実に進める必要がある。
2020年夏季五輪の東京開催が決まった。「復興五輪」の掛け声もある。被災地の人たちが共に楽しみ、喜べなくては、大会の成功は望めない。
安倍晋三首相は「復興を成し遂げた日本の姿を世界に発信する」と語った。約束は、守らなくてはいけない。五輪のための復興ではないのは当然のことだが、五輪を復興速度に拍車をかける、いいきっかけとしたい。
五輪招致は国や都、財界やスポーツ界を挙げたオールジャパン体制で成し遂げた。陣頭に立った安倍首相は「みんなで頑張れば夢が実現できるということを体験できたのではないか」とも語った。
その体験を、震災からの復興に生かし切ってほしい。五輪で創出される雇用や整備工事に、被災者や被災企業を優先することも実行してもらいたい。