【きょうの人】古川日出男さん(47)故郷・福島で「文学の学校」を開く作家 | 毎日のニュース

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 ■「自分の言葉を使うための手助けができれば」

 高校までを過ごした福島県郡山市で24、25の両日、無料のサマースクール「ただようまなびや 文学の学校」(申し込みはウェブサイト、www.tadayoumanabiya.com/)を開く。講師は作家の川上弘美さんやテレビドラマ「あまちゃん」の音楽を手がける大友良英さんら10人。講義や座談会から、創作に挑戦してもらうワークショップまで内容は多彩だ。「東日本大震災から2年が過ぎ、新たなプロジェクトは減ったし、福島で明るい話題が報じられることも少ない。空気を変えたいですね」。故郷を思う言葉に、力がこもる。

 早稲田大を中退し平成10年にデビュー。純文学系の三島由紀夫賞のほかミステリーやSFの賞も受け、ジャンルを越境する物語作家として知られる。震災と原発事故直後こそ「無力感に襲われた」が、自身の表現と真摯(しんし)に向き合い、原稿用紙1千枚に及ぶ長編を完成させ、被災地で自作の朗読劇も上演。その過程で抱いた、福島へのステレオタイプな見方に対する違和感が今回の企画につながった。

 「苦しみも悲しみも、100人いれば100通りのはずなのに、『悲劇』という単純化した言葉でくくられる。みんなが自分の言葉を使うための手助けができれば事情は変わるのでは、と。一つだけの正解は教えない…そんな学校があってもいい」

 会場を押さえ、時間割を作り、参加者の弁当も手配する。慣れない事務作業を高校時代の演劇部の後輩たちが助ける。「演劇の座長が嫌で一人でできる小説を始めたのに、完全に“座長回帰”。でも、気が回る人が周囲にいてくれて本当にありがたい」(海老沢類)