6月28日、いじめ防止対策推進法が公布された。大津市立中学2年生のいじめ自殺事件をきっかけにしてできた法律だ。新聞、テレビ、週刊誌、月刊誌などのメディアが一斉に報じ、日本中の関心がいじめ自殺事件に集まるほどだった。マスコミが一過性の報道にとどまらず事件を追跡した今度こそ、いじめ防止に取り組む機運が盛り上がってほしいと私は期待していた。幸いにも与野党多数の政党による議員提案でもって衆参両院で可決され、いじめ防止に向けた枠組みは大きく前進した。
しかし、いじめ防止法の成立後も相変わらず全国各地でいじめが原因の自殺が相次いでいる。これは一体どうしたことだろうか。いじめ防止に向けて制度が整い始めたことは確かなのだが、大本の法律ができたからと言っていじめ問題が解決されるわけではない。「仏造って魂入れず」とならないように、いじめを許さない社会総ぐるみの思いを定着させなければ、せっかく法律を作った意味がなくなると思う。これまでの悲しい事件の教訓をきちんと受け止めることなく、よそごとのように聞き流しているのだとすれば、とても情けないことである。