大国の狭間で揺れるブータン 存在感増す中国、後ろ盾インドは後退 | 毎日のニュース

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 【ティンプー=岩田智雄】13日に総選挙が行われるブータンが、国境を接する2つの大国、インドと中国の間で揺れている。中国からの輸入品や観光客が目立ち始める中、伝統的な友好国インドとの関係が後退し、インドの不興を招いているとの批判が国内で起きているからだ。ヒマラヤ山脈の小国ブータンは、経済だけでなく財政や安全保障もインドの支援で成り立っている。中国の存在感が国家の安定に影響を与えるのではないか-との懸念が強まりつつある。(ティンプー 岩田智雄)

 ティンプー市内の市バスターミナル。緑と白に塗り分けられた真新しいバスが往来する。ブータン郵政公社は昨秋、中国製のバス15台を調達した。品質と値段を考慮して選定したが、これが野党、国民民主党やメディアから「なぜインド車ではないのか」との批判を浴びることになった。

 昨年6月、ブータンのティンレイ首相(当時)は中国の温家宝首相(同)とブラジルで会談、双方は外交関係樹立を目指すと報じられていた。ブータン側は報道を否定したものの、バスの購入はその直後だっただけに、両国が接近しているとの印象が強まった。

 ブータンでは今月、インドから輸入している家庭用ガスの値段が2倍以上に値上げされた。インド政府の補助金が廃止されたのが理由で、民主党は「インドとの関係が後退しているからだ」と主張する。

 インドの政治評論家、ラメシュ・チョプラ氏は「インドは間違いなく懸念している」と話す。

    

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 ブータンとインドの緊密な関係の構築は、インド独立2年後の1949年にさかのぼる。ブータンはこの年、旧宗主国・英国との関係を踏襲し、インドの助言に基づいて外交を行う条項を盛り込んだ「友好条約」をインドと締結した。