小説諸説。-有頂天家族
『有頂天家族』 森見登美彦 (幻冬舎文庫)
オススメ度: ★★★★★

すごい久しぶりに森見氏読みました。

やっぱりこの人の文章おもしろくて好き!!

きっと好みは分かれるんだろうけど私は好き!!


それから見てみてよ、この表紙!超かわいいーーー!!


そんなわけで即買い。

読んでみて爆笑、かつ、切ない気持ちにしゅんとした。


さすがの森見氏、京都が舞台なのはともかく設定がスゴイ。

物語は京都に暮らす狸・下鴨矢三郎の一人称なのですが、

彼は京都についてこう紹介します。


― 平安遷都この方続く、人間と狸と天狗の三つ巴。


したがって登場人物は狸と天狗と人間。


まずは狸の下鴨一族。

「狸鍋」になって喰われてしまった狸界の棟梁、父・総一郎。

宝塚が大好きな雷嫌いの母。

父の後を継ぐべく奮闘するも、器の小さい長男・矢一郎

今は蛙となって井戸の底で暮らす次男・矢二郎。

阿呆なことが大好きな語り手である三男・矢三郎。

まだまだ小さい四男・矢四郎。


そして総一郎の弟、夷川早雲一家。

阿呆で悪戯好きな双子の息子、金閣・銀閣。

矢三郎の元許婚にして姿を見せない口の悪い海星。


下鴨一族が師匠とする落ちぶれた天狗、

「赤玉先生」こと如意ヶ嶽薬師坊。

赤玉先生に見込まれた、天狗より天狗らしい人間、

鈴木聡美こと“弁天”。


これだけでもとっても魅力的なのだから、

森見氏にかかればその魅力はとどまるところを知らず。



【第一章 納涼床の女神】では物語の大枠が語られ、

矢三郎は赤玉先生の命令で恋のキューピッドとなり。


【第二章 母と雷神様】では、大きな雷のもと、

下鴨一家はその絆をより一層深めてみたり。


【第三章 大文字納涼船合戦】では、

下鴨家と夷川家の壮絶なバトルが繰り広げられ。


【第四章 金曜倶楽部】で矢三郎は

父を喰った憎き相手・金曜倶楽部と懇意になり。


【第五章 父の発つ日】では赤玉先生と銭湯につかった後、

次兄が蛙になった経緯を知り。


【第六章 夷川早雲の暗躍】では、

狸界の棟梁・偽右衛門の座をめぐる戦いが勃発し。


【第七章 有頂天家族】では、下鴨家の大ピンチを

家族団結のもと乗り越えて、めでたしめでたし。


あー、なんてステキな物語!笑



言葉のひとつひとつが本当に楽しくて、

毛深い毛玉、狸界にはじまり、

狸基準の言葉がいっぱい出てきます。


下鴨家の家訓ともいう

「阿呆の血のしからしむところ」というべき出来事の面白いこと。

金曜倶楽部の“布袋”こと淀川長太郎と一家のエピソードは

特にとっても奇妙で切ないです。


私のイチオシは、姿を見せないかわいい海星ちゃん!

下鴨家の親類にして最大の敵である夷川家の一人娘の彼女は

姿を見せないものの、矢三郎に対して悪辣な言葉を吐きつつ、

いつも下鴨家を助けてくれるのです。

彼女はなんだかんだで、矢三郎のことが好きなわけですが、

矢三郎は全く気づく気配がなくて、読者としては超やきもきする!

しかも海星ちゃんは、次兄・矢二郎は蛙になる一要素だったり。


この次兄の【井の中の蛙】という台詞が好きです。

なんだか切なくて、それでいて何もかも知ってるような。

ダメな末っ子・矢四郎も超キュート。


総一郎・早雲兄弟の仲が険悪になった原因は

はっきりとは書かれていないけれど、

察するに恋愛沙汰なのです。

四兄弟の母に早雲は惚れていたのですね。

だから、母が狸鍋になるのを必死に阻止してみたり。

海星ちゃんが素直じゃないのは父親譲りかしら?


矢三郎と赤玉先生と弁天の三角関係も複雑です。

いい年して弁天にメロメロの赤玉先生。

弁天に初恋をし、

それゆえ赤玉先生の失脚に一役買ってしまった矢三郎。

赤玉先生のもとを抜け出し、矢三郎のことを

「食べちゃいたいくらい好き」と言ってのける弁天。

この複雑さゆえ、

矢三郎と赤玉先生の「先刻御承知」なやり取りは切ないのです。



そしてこの物語は、矢三郎と総一郎の言葉に尽きるのです。


― 面白く生きるほかに、何もすべきことはない。

― 面白きことは良きことなり!