小説諸説。-予告殺人

『予告殺人』 アガサ・クリスティー
(早川書房 クリスティー文庫)
オススメ度: ★★★☆☆


誕生日に友人のアリス氏にいただいた本。

「星座別シリーズ」という企画があったらしく、

私は、8月生まれの獅子座。

【獅子座にぴったりのミステリー】ということで、

【大胆 『予告殺人』 前代未聞の殺人予告!】となってました。


クリスティーは好きです。

これはミス・マープルだけど、

やっぱり私個人としては、灰色の脳細胞・ポワロが好きかな。


クリスティーのクラシックな感じとか、

恩田氏のいう「ゴシックホラー」な感じとか、

いかにもイギリス!な雰囲気とかも、おもしろくて好き。


*****あらすじ*****

イギリスの田舎町、チッピング・クレグホーン。

この村のリトル・パドックスに住む

レティシィア・ブラックロックのもとで

殺人が起こるという広告が新聞に載った。


「殺人申し上げます」という文から始まるこの広告に

魅せられた人々が、リトル・パドックスにやってくると、

本当に殺人事件が起きて――。


*****************


話が複雑なので、あらすじも一言じゃ書けないけど。


以下、多少のネタバレも含めて。


実は、レティシィアが過去に働いていた

ゲドラー氏の遺産をめぐる物語。

彼の妹の子ども、ピップとエンマがあやしいことはすぐわかるけど、

チッピング・クレグホーンの一体誰が、ピップとエンマなのか。


これは見事にミス・リードされました。

なんとなく物語の雰囲気に流されて、ピップとエンマは

男女の兄弟であるように読まされてしまう。

そうするとあやしいのは、レティシィアのもとで暮らす

パトリックとジュリアの兄妹。

これはすっかり騙されました。


読んでいてずーっと、【ある部分】が気になってました。

これは翻訳者の訳し間違い?

それとも、私の英語知識が足りないだけ??

…と、ずーーーっと悩んでいた部分が、実はトリックでしたwww

英語の名前って、日本人には難しい。


レティーとロティーって、似てる非なるもの。


犯人の目星はついていたけど、ラストの事実は読めなかった。

いいラストだなーって思います。


同じクリスティー文庫の『オリエント急行の殺人』を読んだ時は、

訳がイマイチすぎて全然だめだったけど、

今回(田村隆一氏)は、すんなり入ってきました。

彼のクリスティー翻訳、前にも読んだことある気がする。


翻訳をちょっとだけ勉強した者として、

洋物の翻訳はかーなり気になってしまいます。


田舎ならではののんびりした雰囲気と、

警官たちのピリピリした様子の対比がおもしろい。

昔のイギリスの田舎って、こんなんだったんだろうな。


とってもおしゃべりな住人たちだけど、そこからも

当時のイギリスの様子がうかがえて、興味深いです。


あと、特別物語に影響するわけでもないけれど、

キーワードとなる【甘美なる死―delicious death】。

美しい言葉だと思いました。

訳、うまい。


で、星3つの理由。


【1、登場人物が多い】


最初、入っていけなかった。

私、カタカナの名前覚えるのすごい苦手だし…。

話がどんどん込み入ってくので、若干混乱。


【2、固有名詞がわからない】


おしゃべりな住人たちの会話に出て来る固有名詞。

これが、地名なのか、人物名なのか、たまによくわからない。

おまけに、彼らは事件とはなんら関係ない昔話を

急にし出すので、頭がこんがらがりました。


【3、文章が複雑】


これはおそらく、クリスティーの原文のせいでしょう。

他の作品読んでても、まわりくどいと思ったことあるから。

一文が長かったり、とにかく、頭に入ってこない文章が多い。

原文がそうなら、

原文通りややこしく訳してクリスティーっぽさを出すか、

簡潔に日本語らしく訳して読みやすくするか。

これは翻訳者の好み、というか、翻訳の命題でしょうね。


ミス・マープルシリーズの最高傑作といわれてるらしいし、

読む価値はあると思う。


『オリエント急行の殺人』と

『そして誰もいなくなった』も既読なので

そのうちレビュー書きたいと思います。