開催中の企画展 幕末の儒学者たち より 七夕の詩を紹介する。

 

解読に際し、徳田武先生からご教示をいただいた。

 

書幅は、波立寺蔵である。

 

神林復所 一七九五~一八八〇 朱子学者。佐藤一斎、林述斎に学ぶ。一斎の学は継承せず。平藩校施政堂教授。『易象発揮』『五経擬策問』。

 

  神林復所 七言絶句

七夕雲晴属望新   七夕(しちせき)雲晴れて属望(しょくぼう)新たなり

家々乞巧星辰   家々乞巧(きっこう)星辰に値(あ)たる

欲涼銀河詢天女   銀河に涼みて天女に詢(と)はんと欲す

記否当年乗槎人   ()するや否や 当年乗槎(じょうさ)の人を

      *上平十一真

○属望 望みをかける。 

○乞巧 陰暦七月七日の行事。技工、芸能の上達を願う祭。もと中国の行事で、日本でも奈良時代以来、宮中の節会としてとり入れられ、在来の棚機津女(たなばたつめ)の伝説や祓の行事とも結びつき、民間にも普及して現在の七夕行事となった。 

○乗槎の人 乗槎は、航海すること。張騫(ちょうけん)をいう。『史記』「大宛伝」の末尾に、張騫は大夏より帰国した後に黄河を遡ってその源流を突き止めた、と添え書きがある。この一節が西晋の張華が奇聞・伝説を集めて著した『博物志』中の「ある人が不思議な浮槎にのって海を渡り、天の河を遡って牽牛・織女に会った」という説話と合体し、「張騫乗槎説話」として発展した。

 

七夕に雲が晴れて、新たな願いをかけた。

家々は乞巧の行事で、星に対している。

銀河に涼んで天女に問いたい。

昔、槎にのって銀河を遡った張騫のことを憶えていますかと。