最近読んだ本69 | 城館のフィールドワーク

城館のフィールドワーク

全国にゴマンとあるという城館を、徒然なるままに紹介する探訪記。ときどき浮気して古墳も紹介。居住地の福島県が中心です。

最近読んだのはこの3冊。

早島大祐『足軽の誕生 室町時代の光と影』(朝日選書 2012年)は、公武政権が同居して首都となった京都に、室町時代の構造的特質を読む。嘉吉の乱で滅亡した赤松家の牢人や、飢饉で生まれた流民が首都である京都に流入し、盗賊や博徒などのならずものと一体化していく。一方で、機能不全に陥った幕府軍制にかわって、彼らを含んだ軍隊が編成され、徳政一揆などに対応する。没落人たる彼らのエネルギーが、足軽を生み出したということか。

藤田達生『戦国日本の軍事革命 鉄炮が一変させた戦場と統治』(中公新書 2022年)は、分権的乱世を短期間に収束させた立役者として、大量の鉄炮を組織的に運用した織田信長を位置付ける。近年見直しが進む信長像に対して、一昔前の信長評価に逆戻りしたような感がないでもないが、個人的には著者の主張の方がしっくりする。信長・秀吉の進めた「軍事革命」が「官僚組織」の発達を促し、江戸時代の幕藩体制につながっていくらしい。

乃至政彦『戦国武将と男色 増補版』(ちくま文庫 2024年)は、研究史では取り残されていたという室町・戦国時代の武家男色の実像に迫る。公家や僧侶の世界との接触で、室町時代になって武家にも男色が受容されたらしい。幕府が京都に開かれたのが、こんなところにも影響していることに驚かされる。戦国武将の男色事例のほとんどは、確かな史料では確認できず、後世の軍記物が江戸時代的なマイナスの価値観で脚色したものと評価する。