プラスチック分解バクテリア研究の現状

近年、プラスチック汚染問題は地球規模で深刻化しており、プラスチックを分解するバクテリアの研究が活発化しています。

プラスチック分解バクテリアの種類と特徴

  • ポリエチレンテレフタレート(PET)分解バクテリア:PETはペットボトルや繊維などに使用されるプラスチックです。

2016年に日本で見つかった「イデオネラ・サカイエンシス」が有名です。

 

イデオネラ・サカイエンシスは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を分解する細菌の一種です。2016年に、日本の京都工芸繊維大学と大阪市立大学の研究チームによって発見されました。

 

イデオネラ・サカイエンシスの特徴

  • グラム陰性細菌
  • 桿状
  • 好気性
  • 運動性なし
  • PETを唯一の炭素源として利用可能
  • PETを分解する2種類の酵素を産生

PET分解酵素

  • PETase:PETを二酸化炭素とエチレングリコールに分解
  • MHETase:二酸化エチレンテレフタレート(MHET)を加水分解してエチレングリコールに分解

発見の意義

  • PETは自然界で分解されることが難しいため、環境中に蓄積し、深刻な環境問題を引き起こしていました。
  • イデオネラ・サカイエンシスの発見は、PETを生物分解する可能性を示し、プラスチック汚染問題の解決に貢献できる可能性があります。
 
  • ポリスチレン(PS)分解バクテリア:PSは発泡スチロールなどに使用されるプラスチックです。2015年に米スタンフォード大学で発見された「ワックスワーム」が有名です。
  • ポリエチレン(PE)分解バクテリア:PEはビニール袋やレジ袋などに使用されるプラスチックです。2020年に英ポーツマス大学で発見された「Ideonella sakaiensis 201-F6」が有名です。

研究の進展

  • これまでに様々なプラスチック分解バクテリアが発見されていますが、多くのバクテリアは分解速度が遅く、実用化には課題があります。
  • 研究者たちは、遺伝子組み換え技術などを活用して、より効率的にプラスチックを分解するバクテリアの開発を進めています。
  • プラスチック分解酵素の研究も進められており、将来的には酵素を用いたプラスチック処理技術が開発される可能性もあります。

課題と展望

  • プラスチックの種類によって分解バクテリアが異なるため、様々な種類のプラスチックを分解できるバクテリアの開発が必要です。
  • プラスチック分解バクテリアが環境に与える影響についても調査する必要があります。
  • 実用化に向けて、プラスチック分解バクテリアの培養技術や酵素の生産技術の開発も必要です。

プラスチック分解バクテリアは、プラスチック汚染問題の解決に貢献できる可能性を秘めた技術です。今後の研究開発の進展が期待されます。