特別編です。
ここでは天孫降臨に関わる諸神の筑紫祭祀を「福岡県神社誌」(デジタルアーカイブ:ネット版*)を用いて探ります。 *再び、地域の拠点図書館に行かずも、ネット版を利用できるようになりましたので、この特別編が可能になりまし た。デジタルアーカイブである故に、ネット上に公開する「未来社会型図書館システム」に戻すのが当然なのです
が、現実は色々な事情(カベ)があったのでしょう。兎も角、良かったです。
「福岡県神社誌」をこのネット上に公開する為にご配慮・ご尽力された方々に感謝です。
<目次> 天孫降臨神話6:降臨神&随従神の筑紫祭祀
1降臨神&随従神の筑紫祭祀(まとめ) 本報
1)総括:ニギハヤヒ&ニニギ一族の祭祀
2)降臨随従神の筑紫祭祀(まとめ)
2降臨神&随従神の筑紫祭祀(個別の寸考) 次報(予定)
3降臨随従神の筑紫祭祀(付属資料) 次々報(予定)
1)天津五男神の筑紫祭祀
2)五伴緒(五部神)の筑紫祭祀
3)忌部五神の筑紫祭祀
4)思兼神の筑紫祭祀
1降臨神&随従神の筑紫祭祀(まとめ)
先ず、総括:ニギハヤヒ&ニニギ一族の祭祀で降臨神の祭祀をまとめます。
1)総括:ニギハヤヒ&ニニギ一族の祭祀
総括:ニギハヤヒの祭祀 ニギハヤヒは天火明命と同神だとする「先代旧事本紀」の説に従います。ご留意下さい。
(1)笠置山と天照御魂神社
ニギハヤヒは笠置山(宮若市)への降臨伝承があり、それを受けて、その祭祀は天照神社(宮若市、上宮・中宮・外宮)3社が宮若市に鎮座していますので、注目の地域です。
・笠置山(宮若市)へのニギハヤヒ降臨伝承と祭祀
・天照御魂神社(天照宮、宮若市磯光儀長、筑前国鞍手郡、犬鳴川右岸)
祭神:天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊、八幡大神・応神天皇・春日大神・天児屋根命
・上宮ー笠城神社(鞍手郡宮田町有高、天照神社摂社) 祭神:饒速日命
・中宮ー穂掛神社(鞍手郡宮田町有高、天照神社摂社) 祭神:饒速日命
(2)英彦山と英彦山神宮
英彦山には天忍穂耳尊の降臨伝承があり、その祭祀社・英彦山神宮の境内社(摂社・末社)にも、主神・天忍穂耳尊の子神であるが故でしょうか、天火明命(ニギハヤヒ)やニニギ及びその子神(ホホデミ・フキアエズ)が祀られ、更に、田川郡(6社)と京都郡(3社)にもニギハヤヒは祭神として鎮座しています。
この内、大原八幡神社は、彦火明命10世孫の大原足尼命を祀り、その後、饒速日命や八幡三神を勧請したようです。
・大南神社(田川郡添田町、英彦山神宮内) 祭神:天火明命
・鳥尾神社(田川郡添田町、英彦山神宮内) 祭神:天火明命
・八幡神社(田川郡大任町) 祭神:饒速日命・神功皇后・姫大神・誉田天皇・猿田彦大神
・白庭神社(京都郡苅田町与原御所山) 祭神:饒速日命・大己貴命・罔象女神
・大原八幡神社(京都郡みやこ町勝山大久保)、別説:京都郡苅田町新津・恩塚
祭神:饒速日命・大原足尼命・誉田別命
由緒:大原足尼命は、饒速日命(=彦火明命)10世孫で、豊国国造としての善政の故に、没後、民は徳を
慕い、新津字祖父墓の地に大原足尼命の塚を造り祀った、と云う由です。
・また、六世紀後半に、この京都郡域を治めていた物部氏が恩塚山に大塚(廟所)を造り、大原足尼命
を氏神として祭り、その後、饒速日命・応神天皇・仲哀天皇・神功皇后を勧請し、現在に至ったと
も云います。
また、英彦山周辺に「高住神社」の同名社4社が鎮座し、天火明命を祀りますが、これは「豊前坊・高住神社」からの勧請と考えられます。
・豊前坊・高住神社(田川郡添田町英彦山) 祭神:天照国照彦火明之命・豊日別大神(豊日別国魂神)
・天照大神・少名毘古那命・火須勢理命
・高住神社(天照大孁命神社、田川郡添田町彦山) 祭神:天火明命・天照大御神、豊日別命・火須勢理命・少彦名命
・高住神社(田川郡添田町津野) 祭神:火明命、豊日命、火進命、他3柱、
・高住神社(熊野神社境内、京都郡今元村今井) 祭神:豊日別命、天照大御神、天火明命、火須勢理命、少彦名命
やや離れて、次の2社が鎮座しています。
・熊野神社(古賀市町筵内、糟屋) 祭神:饒速日命、熊野三神(速玉男命、伊弉冉命、事解男命)、宇麻志麻智命
・白木神社(朝倉市上秋月2408、筑前夜須) 祭神:天照國照彦
(3)筑後のニギハヤヒ(天火明命)祭祀
以上は筑前・豊前の情報ですが、筑後も見なければいけません。だが、筑後はやや難解でした。
伊勢天照御祖神社のこれまでの祭神説に当ブログは疑問符を投じましたので、ご批判下さい。
<天照御祖神社>
筑後には伊勢天照御祖神社(大石神社、久留米市大石)と、それとは別に、その分祀と思われる天照御祖神社2社を見出します。
その祭神は伊勢天照御祖神社のそれとは異なり、天照皇大神や手力男神なのです。これを「どう考えるのが良いのか」を検討します。
・天照御祖神社(筑後市水田町富安、天満神社境内) 祭神:天照皇大神、手力男神
・天照御祖神社(久留米市城島町江上、日吉神社境内) 祭神:手力雄命
<伊勢天照御祖神社>
伊勢天照御祖神社は、その「境内案内板」(*)にある如く伊勢からの分祀である以上、その祭神は伊勢神宮(内宮)の祭神である筈なのです。
◇伊勢天照御祖神社(大石太神宮・大石神社、久留米市大石町、筑後三瀦)
祭神:天照国照彦天火明尊(饒速日命)
由緒:創建は不詳。伝承では、国司越前守が伊勢大神宮の瑞垣内の小石と古鏡をここに祀った、と云う。
大石神社遺跡・速水遺跡・南崎遺跡など弥生時代中後期の遺跡が周辺に広がり、古くから祭祀が行わ
れていた、と推定され、当社の御神体は本殿土間にある巨石で、支石墓の上石、又は、古墳石室の蓋
石と推測されている。
境内社:祇園神社、佐岐神社、大國主神社、恵比須神社、粟島神社、大石霊社、事代主神社、
天満宮。入口の鳥居側には猿田彦大神の石祠がある。
* 式内・伊勢天照御祖神社(案内板の抜粋):
・「延喜式神名帳」所載、筑後国大小四座の内の一社。
・944(天慶七)年の「筑後国内神名帳」には、「正五位下伊勢天照名神」とも見える。
・桓武天皇の784(延暦三)年9月、国司藤原易興の受奏により、伊勢国山田原(宇治山田、伊勢市)より
遷座したと云う。筑後における最も由緒正しい皇大神宮(内宮)の分祀である。
・1201(建仁元)年の文書には単に「伊勢社」とあり。
・「高良社画縁起」(室町期末):山麓大鳥居の北(*)に「伊勢」の小祠が描かれている。
・1767(明和四)年の府中大火を機として、現在地に遷座された。 *御井小学校正門付近
伊勢神宮(内宮)の主祭神は天照坐皇大御神(天照大御神)であり、相殿神は天手力男神と万幡豊秋津姫命ですから、分祀と思われる上記の天照御祖神社2社の祭神は、3神全てではないにしても、明らかに内宮の祭神と合致していますので、「伊勢からの分祀」の残映と読めます。
・伊勢神宮(内宮)主祭神:天照坐皇大御神(天照大御神)、相殿神:天手力男神・万幡豊秋津姫命
大石・伊勢天照御祖神社に対して、高良大社境外末社にも同名の式内社、伊勢御祖神社が論社としてありますが、こちらの祭神は天照大神ですから、「伊勢からの分祀」に合います。
・伊勢天照御祖神社(久留米市御井町中谷、高良大社境外末社、式内社、伊勢御祖神社)
祭神:天照大神
由緒:784(延暦3)年、伊勢皇大神宮から分祀され、府中大火が契機となり現在地に遷座した。
久留米市大石町の伊勢天照御祖神社と同じく、式内小社の論社だが、祭神は異なる。
だが、大石・伊勢天照御祖神社の祭神を天照国照彦天火明尊(饒速日命)とするのは、どう見ても、無理があります。勧請元の伊勢神宮には「天火明尊」も「饒速日命」も祀られていないからです。
これは「天照大神→天照国照彦」とした、いわば、「こじつけ」でしょう。
桓武朝に伊勢から分祀したとすれば、勧請神は天照大神の筈なのです。
元々、当社は大石神社(大石霊社)と称していたのでしょう。
大石神社は久留米市のほかにも壱岐市・唐津市・田川郡川崎町など北九州には多く、支石墓につながる祭祀を連想させる社名です。
また、当社は、表は「伊勢御祖神社」の神額で、裏は「佐岐神社」の神額を掲げているのは、先祀神が佐岐神で、伊勢御祖神は後祀である可能性を示唆しています。
佐岐神を探しますと、次の如くあり、未だ確定的ではありませんが、どうも、少彦名命が「佐岐神」らしく思われます。
愛媛:天満神社(北宇和郡松野町松丸) 祭神:菅原道真公、
境内社:厳島(市杵島姫命)・佐岐(少彦名命)・金刀比羅(大物主神)
蔵王神社(北宇和郡松野町吉野)祭神:安閑天皇・水分神・保食神、
境内社:恵比須社・佐岐社・神明社・粟島神社
熊本:佐岐神社(熊本市東区小山1丁目)道君首名公に由来する少彦名神社であり、夫婦神像は道君首名公の夫婦像。
兵庫:佐岐神社(赤穂郡上郡町)祭神:白兎大神・素盞鳴命
・備中神楽:仲介の労をとりし稲背脛命は、御命の末社、佐岐の浦に佐岐大明神と御勧請奉るほどに、
十二支五姓の大御宝に疱瘡はやりきたる時は、疱瘡平癒の神として
・佐々伎神社 (豊岡市但東町佐々木、式内社 但馬國出石郡 佐々伎神社、県社) 祭神: 少彦名命 大彦命
岡山:麻佐岐神社(総社市秦、正木山381m山頂、御神体:磐座)式内社・備中國下道郡) 祭神: 大國魂神
・麻佐岐宮(倉敷市真備町有井462)
<小郡市の彦火明命祭祀>
更に、筑後国御原郡(現小郡市)には、「福岡県神社誌」(中巻)によれば、天照国照彦天火明尊(饒速日命)を祭神とする神社が次の様に鎮座しています。
◇筑後国御原郡における勧請社(?)
・媛社神社(小郡市大崎) 祭神: 媛社神(=饒速日命)、織女神(磐船神社、棚機神社)
・福童神社(小郡市大崎東) 祭神: 天照国照彦火明命
・福童神社(小郡市寺福童) 祭神: 天照国照彦火明命
色々吟味すべき事は多いのですが、ここでは福童神社(寺福童)の創立譚と祭神構成に注目します。
「神社明細帳」(明治期)には、祭神は天照国照彦火明命、とある由で、それが「福岡県神社誌」(昭和期)に引き継がれているのです。
「神社明細帳」とは、1879(明治12)年6月28日の内務省達乙第31号により、神社及び寺院の明細帳を作成し、
その副本を内務省に送付することが各府県に命じられ、各府県では、社寺取扱規則(明治11年内務省達乙第57号)
の基準に合致する社寺を、届出又は職権によりそれぞれ神社明細帳及び寺院明細帳に登載した、と云う事です。
(出所) ウイキペディア
福童神社(寺福童)の創建は室町時代末期と見られ、当時ー1557(弘治3年)ーの木札には「伊勢天照大神宮」が記されてあるので、祭神は天照大神である筈です。
だが、明治の「神社明細帳」が祭神を天照国照彦火明命としたもの、と推測されます。
小郡・福童神社は久留米市の伊勢天照御祖神社からの勧請なのではないか、と思われます。
福童神社(小郡市寺福童神屋敷846)の境内掲示板によれば、
創建:現在の神社明細帳には不詳とあるが,神殿内の古い木札によれば1557(弘治3年)の今から遡れば438年前
の室町時代末期に創建されたものと判明した。
祭神:「神社明細帳」には天照国照彦火明命とあり、木札の表面には、彦山大権現・高良大菩薩・寳滿大菩薩・
伊勢天照大神宮・八幡大菩薩・住吉大明神・□□□□□(判読不可能)、裏面には弘治三天丁己朧月
十一月二日、霊松山善福禅寺 住持比丘安叟老納誌之とあり、 その当時は神仏混淆時代で善福寺の住職が
神主をも兼ねていたことが窺われる。 (出所) ブログ「空 sora そら」
<城島町の天照大神荒御魂の祭祀>
今は久留米市域内ですが、かっては三潴郡だった、城島町に「天照大神荒御魂」の祭祀社2社が、相近接して鎮座しています。
伊勢皇大神宮別宮の内に「荒祭宮」があり、その祭神が「天照坐皇大御神荒御魂」なのです。
その荒御魂が城島町の伊我理神社2社に祀られていることが判ります。
・伊我理神社(久留米市城島町六町原) 祭神: 天照大神荒御魂
・伊我理社 (久留米市城島町大依、天満神社境内) 祭神: 天照大神荒御魂
<まとめ> 筑後の彦火明尊祭祀のまとめ
筑後の彦火明尊祭祀の真実は、伊勢皇大神宮から久留米市の大石神社(伊勢天照御祖神社)への天照大神の分祀が元であり、それが後に、祭神変質したものと判断します。
伊勢皇大神宮分祀の残像が、天照御祖神社2社、高良・伊勢天照御祖神社、及び、伊我理神社2社の祭神として見受けられ、そこには伊勢神宮の祭神が祀られていますが、伊勢天照御祖神社(久留米市)と福童神社(小郡市寺福童)の祭神は天照国照彦火明命(饒速日命)に読み替えられたものと思われます。
1 天照御祖神社(筑後市水田町富安) 祭神:天照皇大神、手力男神 天満神社境内
2 天照御祖神社(久留米市城島町江上) 祭神:手力雄命 日吉神社境内
3 伊我理神社(久留米市城島町六町原) 祭神:天照大神荒御魂
◇ 伊勢天照御祖神社(久留米市大石町) 祭神:天照国照彦天火明尊(饒速日命)
・福童神社(小郡市寺福童) 祭神:天照国照彦火明命
従って、筑後のニギハヤヒ祭祀は真正度が低く、実際は、天孫降臨とは関係がなかったものと思われます。それとは対照的に、筑前(糸島郡)と豊前諸郡のニギハヤヒ祭祀は、より真正度が高く、天孫降臨につながるものと見ます。
注 後の集計図表1でのニギハヤヒ欄の久留米市・小郡市の括弧内の祭祀社数は真正度が低いと見て、集計の対象に
しておりません。お断りしてお知らせします。
◇総括:ニニギ一族の祭祀
ニニギの祭祀はこれまで次の二報などで触れて来ましたが、その後の追加情報を含めてここで、再々度、総括しますが、詳しく述べません。
・「弥生神代考6 天孫降臨考 第3部 天孫降臨の道1 糸島上陸説」(2018年11月18日)
図表2・糸島市界隈のニニギ一族の祭祀社、 図表4・糸島市界隈のニニギ一族の祭祀
・「弥生神代考6 天孫降臨考 第3部 天孫降臨の道3 「天孫降臨の道」候補5案の評価」(2018年12月06日)
図表7 瓊瓊杵尊(嘉穂郡)の祭祀ー馬見山への降臨伝承と天照神社
・追加:「福岡県神社誌」デジタルアーカイブより抜粋引用
(1)馬見山のニニギ降臨伝承と周辺の祭祀
図表1 瓊瓊杵尊の祭祀1ー馬見山への降臨伝承と天照神社
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<嘉麻市>
・馬見神社(嘉麻市馬見、馬見大明神) 祭神: 天津彦火瓊瓊杵尊、木花咲耶姫命、伊弉諾命、
相殿:賀茂大明神・荒穂大明神、
・荒穂神社(嘉麻市大隈町牛隈) 祭神: 瓊瓊杵尊・別雷神
・ニニギの降臨伝承は、遠賀川を遡上した水源地近くの馬見山(嘉麻市馬見、嘉穂郡と朝倉郡の境の山)にあり、
ニニギは山腹の馬見神社(上宮)と荒穂神社(下宮)に祀られています。
・「鎌田原墳墓群」(嘉麻市馬見123-1)は吉野ヶ里遺跡に匹敵する規模の弥生遺跡といわれています。
・馬見山東方14~16kmに英彦山があり、ニニギの父とされるオシホミミ(天忍穂耳尊)の祭祀社・英彦山神宮が
在ります。オシホミミは遠賀川中流の香春町の香春・忍骨神社にも祀られています。
<飯塚市>
・天照神社(飯塚市蓮台寺宮前) 祭神: 天照大神、瓊々杵命、手力男命
・天照神社(飯塚市蓮台寺池尻) 祭神: 天照大神・手力男神・猿田毘古神
・天照皇大神社(飯塚市蓮台寺本村、旧・八面宮、八額山の麓) 祭神: 瓊瓊杵尊、天照大神・猿田彦神、
<北九州市>
・御崎神社 (北九州市若松区有毛辻)
祭神:瓊々岐尊・ホホデミ・事代主命・天忍穂耳命・伊弉諾・伊弉冉・宮地嶽三神・素戔嗚尊
・高見神社(北九州市八幡東区高見1丁目)
祭神(本社)造化三神:天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神、
四神:可美葦芽彦遅神、天之常立神、国之常立神、豊雲野神、
地祇五代:天照大御神、天忍穂耳神、瓊瓊杵命、穂穂手見命、鵜草葺不合命
(相殿):仁徳天皇(大雀命)、石之比売命、宗像三女神、大己貴命、豊受姫命、
<田川郡添田町>
・玉屋神社(田川郡添田町) 祭神: 瓊々杵命 英彦山神宮境内
・日吉社 (田川郡伊田町) 祭神: 大己貴命・国狭槌尊・瓊々岐尊・正勝吾勝尊・事代主命、
<築上郡>
・日吉神社(築上郡築城町越路)祭神:大己貴命・国狭槌命・瓊々岐尊・大山祇命・忍穂耳命・
・山霊神社(築上郡築城町上別府)祭神:瓊々岐尊・大己貴命・国狭槌命・伊弉諾・大山祇命・天照皇大神・
罔象女神・応神天皇
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(2) 糸島市周辺のニニギ&ニニギ一族祭祀
糸島市周辺のニニギ一族祭祀は特異的に多く観察でき、ニニギ祭祀26社(*)、ヒコホホデミ祭祀9社、フキアエズ祭祀6社を観察します。但し、これらは「福岡県神社誌」に基づく祭祀社数ですので、今、ネット地図上に探しても既に見出せない神社もあります。
*福岡市6社を含む。なお、福岡市西区は旧糸島郡に属していた。
図表2 瓊瓊杵尊の祭祀2ー糸島市周辺のニニギ及びニニギ一族祭祀
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<糸島市>
1 天降神社 (糸島市瀬戸) 祭神:瓊瓊岐尊 (合祀)菅原道真命・譽田別尊・息長足姫命
2 十六天神社(糸島郡二丈町武501) 祭神:瓊瓊杵尊、伊弉諾尊・伊弉冊尊・菅原天神
3 天降天神社(糸島郡二丈町石崎113) 祭神:天日高彦火瓊瓊杵尊、菅原道真
4 天降天神社(糸島郡二丈町波呂394) 祭神:瓊瓊杵尊、速玉之男命・伊邪那美命・事解之男命・菅原神、
5 八坂神社 (糸島市二丈松国454) 祭神:瓊々杵尊、素盞嗚尊、天照大御神、伊弉冊尊、
伊弉諾尊、誉田別天皇、菅原道真、熊野三所大神
6 天満宮 (糸島市二丈満吉) 祭神:瓊々杵尊、菅原神、熊野三神(合祀:鳥越・熊野神社)
7 天降神社 (糸島郡前原町新田) 祭神:瓊瓊杵尊
8 天降神社 (糸島市飯原鶴ヶ迫) 祭神:瓊々杵尊
追・天降神社(長糸村飯原日明)祭神:ニニギ 雉琴神社境内
9 天降神社(糸島市加布里、天満宮内) 祭神:瓊瓊杵尊・木花咲耶姫尊・彦火火出見尊・素戔嗚尊
10 稲留神社(糸島市志摩稲留) 祭神:瓊瓊岐命、天照皇大神
11 神在神社(糸島市神在) 祭神:瓊瓊杵命・天常立尊・国常立尊・伊弉諾命・伊弉冊命・
彦火火出見命・菅原神
12 雷神社 (糸島市雷山) 祭神:水火雷電神(瓊々杵尊)、高祖大神(彦火火出見尊)、
香椎大神(息長足姫尊)、住吉三神、八幡神
・上宮(雷山の頂上付近) 祭神:瓊々杵尊(中殿)、(左殿)、地神五代(右殿)
13 託杜神社(糸島市多久698-1) 祭神:瓊々杵命、伊弉冊命、伊弉諾命、埴安命、
明治45年合併・合霊 鵜草葺不合命・・無格社・少童神社(字元多久)
彦火火出見命・・無格社・高祖神社(字中原)
木花開耶比売命・無格社・横木神社(字高来田)
由緒:元十六天神と称すも、怡土七郷の一郷・託社郷あり、鎮座地も多久故に、託社神社と改称。
14 引津神社(糸島市志摩船越245) 祭神:天津日高彦穂瓊瓊杵命、伊弉諾尊、伊弉冊尊、(小富士村)
15 天降天神(富園) 祭神:皇孫・瓊々岐命
・合祀:伊弉諾天神(神屋敷)・天降天神(富園、皇孫・瓊々岐命)・玉依姫命(影取寳滿神社)
・天降天神(畝詰神屋敷)・天降天神(畝詰神屋敷)・天降天神(西原)を合祀
但し、以上3社は合祀された社を復元しているとも云う。
16 層々岐神社(糸島郡雷山村雷山) 祭神:瓊々岐尊・伊弉諾・伊弉冉
17 参宮神社(糸島市波多江駅南1丁目) 祭神:奈留多姫命、瓊々岐尊・玉依姫命
18 川上六所神社(糸島市本) 祭神:瓊々岐尊、伊弉諾・伊弉冉、玉依姫命、埴安神
19 天降神社(糸島市瀬戸) 祭神:瓊々岐尊
20 天降神社(糸島市新田) 祭神:瓊々岐尊・誉田別天皇・伊弉諾・伊弉冉、ほか3神
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<福岡市>
1 天降神社 (福岡市西区田尻259) 祭神:瓊々岐尊 末:皇大神宮、宇氣神社、八坂神社、庚申社
旧糸島郡元岡村田尻荻浦、古来、本村町石崎今出の氏神
2 伊覩神社 (福岡市西区周船寺440) 祭神:瓊々岐尊・木花咲耶姫命・伊覩県主命、 主船司
3 金武天神社 (福岡市西区金武)? 「 (明治4年、十六天神社を改称)
4 太郎丸神社 (福岡市西区太郎丸2丁目7)祭神:瓊々岐尊・伊弉諾命・伊弉冉命・埴安命、
5 片江天神社 (福岡市城南区片江) 祭神:瓊々岐尊 末社:皇大神宮、宇氣神社、八坂神社、庚申社
6 彦 神社 (福岡市姪浜弥丸、無格社) 祭神:瓊々岐尊
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図表3 糸島市界隈のニニギ一族の祭祀
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<ホホデミ>
H1 高祖神社(糸島市高祖) 祭神(主座)彦火々出見命、(左座)玉依姫命、(右座)息長足姫命
摂社:徳満神社(祭神:大名持神・少彦名神・保食神)、思兼神社、伊弉諾神社、
境外社:幸神社、庚申社、天神社(いずれも字高祖にあり)
H2 宝満宮(糸島市二丈上深江) 祭神:玉依姫命・彦火火出見尊・(菊理姫命)
H3 宝満宮(糸島市二丈長石) 祭神:玉依姫命・彦火火出見尊・菊理姫命(白山神社より)
H4 細石神社(糸島市三雲) 祭神:磐長姫・木花開耶姫
H5 志登神社(糸島市志登) 祭神:豊玉姫命、相殿:和田津見神・彦火火出見尊・息長帯姫命・武内宿祢命
H6 若宮神社(糸島市志摩船越) 祭神:苔牟須売神(盤長姫命)・木花咲耶姫 桜谷神社
H7 染井神社(糸島市大門672) 祭神:彦火火出見尊、豊玉姫命、玉依姫、息長足姫命、熊野三柱大神、
H8 神在神社(糸島市前原神在) 祭神:彦ホホデミ命・埴安命
H9 三所神社(福岡市西区宮浦) 祭神:天津日高彦火火出見命(高祖)、豊玉姫(志摩馬場)、御食入沼命(飯氏)
注 高祖宮(高磯神)・飯石宮(三郎天神)・馬場宮(志摩馬場)を合祀したので三所神社と称す。
<フキアエズ>
F1 波多江神社(糸島市波多江) 祭神:国常立尊・天照大御神・稲倉魂命・大国主神・鵜葺草葺不合命
F2 両所神社(糸島市雷山) 祭神:フキアエズ
F3 能徳神社(糸島市高田2丁目)祭神:天神七代神+伊弉諾尊、伊弉冉尊・玉依姫命、地祇五代神
+鵜鷀草葺不合尊、合祀:是永神社(天神始 国常立尊、地神初 天照大神)
F4 綿積神社(糸島郡小富士村磐越)祭神:フキアエズ・大和多都美神
F5 一の宮神社(福岡市西区今宿*)祭神:鸕鷀草葺不合尊・玉依姫命・豊玉姫命・木花咲耶姫命、大山積神、
*明治42年、青木より・八雲神社(祭神:素盞嗚命・櫛稲田姫命・大己貴命)に合祀
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(出所)福岡県神社誌(上・中・下)、ブログ・空soraそら、産土神明帳、ひもろぎ逍遙、マピオン地図、GOOGLE、
(3)その他の地域のニニギ&ニニギ一族の祭祀
ニニギの祭祀は壱岐に始るのでしょうか。ニニギを祀る神社は、対馬島には見出さず、壱岐島に二社(熊野神社・中津神社)を見出します。調査不十分なので正確性は劣りますが、・・。
更に、九州島近くの的山大島(平戸市)の天降神社にもニニギが祀られているのは注目です。残念ながら、その鎮座由緒は不詳です。
それにしても、朝鮮半島と九州島との渡海途中の島々に天孫の祭祀があるの興味深いです。勿論、記紀神話を知り及んだ後の祭祀かもしれませんが、この経路で天孫降臨(渡来)があったか、と思わせる面があるからです。
K1 熊野神社(壱岐市勝本町立石南触)式内社 壹岐嶋壹岐郡 阿多彌神社
祭神:伊弉册尊 素盞嗚尊 事解男神 速玉男神
相殿:天照大神 国常立尊 正哉吾勝々速日天忍穂耳尊 天津彦々火瓊々杵尊 彦火々出見尊 軻遇突知命 埴山姫命
罔象女神 稚産霊神 大山祇神
K2 中津神社(壱岐市勝本町北触)式内社 壹岐嶋壹岐郡 名神大社
祭神:天津日高彦火瓊々杵尊 天児屋根尊 天太玉命
K3 天降神社 (平戸市大島村前平、的山大島)祭神:天津日髙彦火瓊瓊杵尊
その他の祭祀はコメントなしで次にリストします。
図表4 糸島市・嘉麻市以外のニニギ一族の筑紫祭祀
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<ニニギ>
C1 荒穂神社 (筑紫野市武蔵池上694) 祭神:天津彦火瓊瓊杵命
C2 日子神社 (みやま市瀬高町大草876 )祭神:瓊々岐尊 (山門郡東山村大草)
C3 日向神社 (八女市黒木町大渕673) 祭神:瓊々岐尊 (八女郡大淵村大淵小谷)
C4 日向神社 (八女郡大淵村大淵小詰) 祭神:瓊々岐尊、木花咲耶姫尊、天照皇大御神、
C5 浅間神社 (京都郡今元村今井) 祭神:瓊々岐尊、大山祇命、木花咲耶媛命 熊野神社境内
C6 天神社(那珂川市後野) 祭神:瓊々岐尊 木花咲耶姫命・伊覩県主命
C7 天神社(那珂川市後野) 同上 2社近接してあり<ホホデミ・フキアエズ>
H10 小野神社(八女郡星野村居野) 祭神:彦火火出見尊
H11 日子神社(浮羽郡姫治村) 祭神:彦火火出見尊
H12 萩尾神社(朝倉郡松末村星丸) 祭神:彦火火出見尊
H13 高妻神社(糟屋郡新宮村相島) 祭神:彦火火出見尊
F7H14 愛鷹神社(糟屋郡小野村谷山) 祭神:彦火火出見尊・豊玉姫命・フキアエズ 伊弉冉命・神魂日命
H15 上津神社(田川郡添田町) 祭神:穂々出見命
英彦山神宮境内
F8H16 下津宮 (田川郡添田町) 祭神:穂々出見命、鵜葺不合命 「大山咋命・伊弉冉、
F9H17 宇原神社(京都郡苅田町) 祭神:彦波瀲武鵜茅草葺不合尊、彦火々出見尊、豊玉姫尊
F10H18 高見神社(北九州市八幡東区高見1丁目)
祭神(本社)造化三神:天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神、
四神:可美葦芽彦遅神、天之常立神、国之常立神、豊雲野神、
地祇五代:天照大御神、天忍穂耳神、瓊瓊杵命、穂穂手見命、鵜草葺不合命
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2)降臨神&随従神の筑紫祭祀(まとめ)
次に、「降臨神&随従神の筑紫祭祀」のまとめ(結論)を図表1を用いて述べます。
詳しい内容をお求めの方々には、この次のブログで、個別に祭祀社を記載しつつ記述していますので、ご吟味下さい。 なお、図表1は、スペースの都合上本報に載せられず、次報冒頭に載せます。ご容赦下さい。
まとめ(結論)1:図表1のA、B、C、Dの地域(Ⅱ)で天孫降臨伝承があり、旧糸島郡(Ⅰ地域ー現糸島市+
福岡市西区の一部を含む)は、ニニギとその一族の祭祀社が多い特異地域です。
まとめ(結論)2:この二地域(Ⅰ&Ⅱ)を降臨地域と看做し、注目する神々がこの地域に祀られている
様子(地域分布)を調べますと、次の結論を得ました。
「天津五男神も、降臨随従の主要な神々(五伴緒・忌部五神・思金命五神)も、
筑紫ではこの降臨地域(Ⅰ&Ⅱ)にその祭祀が集中しています。」
注 図表1の赤数字は祭祀社数が多い上位2地域を示します。