僕は足を止めた。



見渡す限りに広がる未開拓の地平線



とっても不安だが、歴史の賢人達はその辺りが人間の新しいクロスロードだと語っている。



とても曖昧だ。



道は整備されてもおらず、タダタダ広がる大地に過ぎない。



しかし迷っても仕方がない。



充分に賢人達の話に耳は傾けたはずだ。



僕はそこに僕の「ISHI」で高見台を築いた。



昇ってみると風がとても入り組んでいて、奇妙な音を立てている。今まで聞いたこともない音だ。



双眼鏡を覗くと、遠くで周りを見渡し彷徨っている人の姿が見える。



とても遠くでだ・・・



「何処からドコマデが交差点なんだ・・・」



ココロが呟くと突然風もないのに高見台は大きく揺れた。



僕は踏ん張り、呼吸を整えた。



「孤独になる準備はしてきたはずだ。」



僕は震える手で双眼鏡を構えた。



すると人々が大挙してやってきた。



誰かが先頭で旗を振りながら、大きな目をギョロギョロとさせて、先導している。



僕は双眼鏡を目に押し付け導かれる群衆の顔を覗き込んだ。




群集には・・・





目も・・・




口も・・・




鼻も・・・




ない



僕は高見台からカレラのところに駆け下りた。



脳みそは捨てられ、簡素化された何かが組み込まれている。



話しかけようにもカレラは先頭の人間が発する妖光にしか反応していない。



僕は最後尾で群集を監視している人間に声をかけた。



「カレラには何故目がない!」



「必要ないんです。言葉もあの方がおっしゃった事しか言わなくていい。努力もナシで最高の力にアヤカレルんです。簡単でしょ。面倒な事は皆嫌いなんです。頭脳は一つでいいのですよ。」



「そんなはずはない!」



「あなた一人が騒ぎ立てて何が変るというのですか?

カレラは自分の「ISHI」で目も口も脳も捨てたのです。

見て下さい。あの幸せそうな姿を!」



「何も見えてない・・・カレラはISHIさえ捨てるように導かれている。」



「見えないことほど美しいものはない。不浄なものなど見なくてもいいのです。ただひたすら信じればいいのです。従順は徳ですよ。」



「君たちは必ず過ちを犯す。世の中に真理などないんだ。」



「なるほど。あなたが一人騒いでも、何も変ることはない。間違いも数が揃えば正解になる。そう言えばあなたの周りには誰も居ませんね。とやかく言う前に数を集める事ですよ。数は力ですからね。数さえあればいいんです。権力を握ると自ずとそれは真理になる。」




「世の中」





「数ですよ」





「数・・・」






「フフフフッ」



                              いぶ生芽