教壇から飛び出す勇気 - 元教員が見つけた新しい世界
こんにちは、あさひです。
今日は、私が教員から転職をしたきっかけについてお話しします。
疑問が芽生えた日 - 進路指導室での出来事
それは、秋の肌寒い日のことでした。進路指導室の窓から、運動場で駆け回る生徒たちの姿が見えます。
3年生の太郎君(仮名)が、おずおずとドアをノックしました。
「先生、ちょっといいですか?」
「お、太郎君。どうぞ入って」
太郎君は、椅子に座るなり切り出しました。「先生、僕、将来何になればいいと思いますか?」
その瞬間、私の中で何かが引っかかりました。
太郎君の真剣な眼差しに、言葉が詰まります。
「そうだなぁ...」と言葉を濁す自分に、もどかしさを感じました。
実は、私自身が就活の経験がありません。
大学時代から教員になることを決めていて、一般企業の選考を受けたことがないのです。
「ちょっと待てよ。私自身、就活もしたことないのに、太郎君の将来をアドバイスしていいのだろうか?」
その日、太郎君には一般的なアドバイスしかできませんでした。
「自分の興味のあることを大切に」「いろんな可能性を探ってみて」...そんな陳腐な言葉しか出てこなかったのです。
太郎君が部屋を出た後、私は長い間、窓の外を眺めていました。生徒たちの将来を本当に示せているのだろうか。
この疑問が、私の心に深く根を下ろし始めたのです。
動き出した歯車 - 日常の中で感じる違和感
その日を境に、私の教員生活に微妙な変化が訪れ始めました。
教室で「社会に出たら〜」と話すたびに、違和感が募ります。
ある日の進路指導での出来事。
「社会人になったら、こんな風に働くんだよ」と説明しながら、自分の言葉に嘘っぽさを感じてしまいました。
生徒たちの「へぇ〜」という反応に、どこか申し訳なさを覚えたのです。
保護者会でも同じでした。「お子さまの将来のために」と熱く語りながら、どこか空虚さを感じるようになりました。
ある母親から「先生は社会経験が豊富だから、安心してアドバイスを聞けます」と言われた時は、冷や汗が出ました。
職員室でも、同僚たちとの会話に違和感を覚えるようになりました。
みんな当たり前のように「社会」や「企業」について語ります。
でも、その実態を本当に知っているのだろうか。私たちは、井の中の蛙になっていないだろうか。
そんな日々が続く中、私の心の中でますます大きな疑問が膨らんでいきました。
「私は本当に、生徒たちに必要なことを教えられているんだろうか?」
この問いが、私の心を昼も夜も離さなくなっていったのです。
決断の日 - 同窓会での衝撃
転機は、大学の同窓会でした。6年ぶりに再会した旧友たち。
私と同じく教員になった友人、そして民間企業に就職した友人たち。
最初は懐かしさに浸っていましたが、話を聞けば聞くほど、その経験の差に愕然としました。
企業で働く友人たちの話は、まるで別世界の出来事のようでした。
「プロジェクトチームを率いて、新製品の開発に携わったんだ」
「海外出張で、異文化を肌で感じたよ。ビジネスの仕方が全然違うんだ」
「会社が新規事業に参入するって決まって、0から組織を作り上げる経験をしたよ」
彼らの話す言葉の一つ一つが、私には新鮮で刺激的でした。
企業の仕組み、組織のダイナミクス、社会人としての成長。私には全く知らない世界が、そこにはありました。
一方、教員になった友人との会話は、どこか既視感がありました。
生徒指導の難しさ、保護者対応の大変さ、部活動の指導...。
確かに大切な話題ですが、どこか狭い世界で回っているような感覚を覚えました。
その夜、ホテルの一室で長い間考え込みました。窓の外に広がる都会の夜景を眺めながら、自分の6年を振り返り、そしてこれからの10年を想像しました。
そして、決心しました。
「教壇を離れよう。社会を知ろう。そして、もっと価値のある教育者になろう。」
この決断は、不安と期待が入り混じった、複雑な感情を伴うものでした。
でも、心の奥底では、これが正しい選択だと確信していました。
新しい世界への一歩 - 初めての就活体験
転職を決意してからの日々は、まさに怒涛の日 でした。
初めての就活。
履歴書の作成から始まり、どんな仕事があるのかのリサーチ、そして面接対策。すべてが初めての経験で、戸惑うことばかりでした。
「職務経歴書って、教師の経験をどう書けばいいんだろう?」
「面接では、どんな質問をされるんだろう?」
不安と緊張の日々が続きました。そんな中、ある面接での出来事は、今でも鮮明に覚えています。
大手教育関連企業の面接室。
緊張のあまり、手が震えていました。
「では、あさひさん。教師としての経験を、我が社でどのように活かせると思いますか?」
その瞬間、頭が真っ白になりました。
でも、次の瞬間、今まで気づかなかった自分の強みが、言葉となって溢れ出しました。
「はい。私は教壇に立つ中で、一人ひとりの生徒の可能性を見出し、それを引き出すスキルを磨いてきました。この能力は、御社の教育コンテンツ開発において、ユーザーの潜在的なニーズを理解し、それに応える製品を作り出すことに直結すると考えています。また、保護者や同僚との日々のコミュニケーションで培った調整力は、チームでのプロジェクト推進に活かせると確信しています。」
自信がありました。
でも落ちました。具体性がないからです。説得力がないからです。
「あ、これが生徒たちの気持ちなんだ」と、身をもって体験しました。
不安と期待、緊張と高揚感。まさに、生徒たちが体験する受験の気持ちそのものでした。
そして、営業に転職が決まった日。オフィスの窓から見える景色は、学校からの景色とは全く違うものでした。これまでにない充実感と共に、新たな使命感が湧いてきました。
「ここから、新しい私の教育者としての人生が始まるんだ」
そんな転職のきっかけのお話でした。
END
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