さとみの仕事は大麻飾り職人だった。
さとみの生み出す注連縄や大麻飾りは、凛とした空気をまとっていた。それは大和撫子のような品のある作品だった。
麻に触れて、共に過ごし、麻の繊細な氣を邪魔せずに、健やかに育むことに一生を捧げたさとみから生み出される精麻飾りが、世界から注目を集めたのは、マースロンがきっかけだった。正確には、マースノン改が命のケガレを払い浄めるという事が、精神世界を中心にした世の中の始まりの流れの中で、完全に需要と供給が一致したのだ。

精麻で創られたマースノン


世界は麻の夜明けを迎えた。
それは、日本の麻の目覚めの時だった。

旧世界と呼ばれているこれまでの世界の価値観の全てがひっくり返ったのが、今の世界だ。
価値観とは、その時代、その世界によって進化する。

進化とは、魂の進化だ。

魂とは何か?その問に答えるならば、魂とは、肉体を操っている操縦者のような存在だ。存在といっても姿形はない。魂とは、ある事を意図する存在によって生み出された遺伝子の地図だ。設計図とでもいうべき意識体だ。

魂は進化するために生み出された、意識体の重なり合った巨大なプロジェクションマップの中の光だ。

これまでの世界から今の世界までの変化は、光の集まりを見ることで一望することが出来る。
これまでの世界では、光が都市に集中していたが、今の世界では、人は自然と調和した集落を形成する田舎に多くの人が移住したのだ。航空写真や衛星写真でその移り変わりを見ることが出来る。


世界は進化したのだ。

みろくの世の夜明けを迎えていた。

三十数年前の日本からは考えられないような大変な覚醒が起こったのだ。
それは、いくえが足摺岬に移住して初めてのお正月を迎えた年だった。

続く