人を好きになることは、
幸せなことだと思っていた。
でも、
叶わないと思い込んだ恋は、
好きになればなるほど苦しくなる。
だから僕は、
嫌いになる理由を探していた。
第一章 嫌いなる理由
ただ嫌いになる理由が欲しかった。
一緒にいる時間が長くなるほど、
本気で好きになって
しまいそうで怖かった。
どうせ僕なんかを
好きになるはずがない。
優しいのも、
笑ってくれるのも、
誰にでもそうなんだろう。
そう思った。
彼女は笑う。
ころころと。
時にはふわりと。
からかうと、
頬を膨らませて怒る。
そんな仕草まで可愛いなんて、
漫画の中だけの話だと思っていた。
だから言った。
「その癖、勘違いされるから
やめた方がいいよ。」
彼女は首を傾げる。
「え?」
「君、自分が思ってる以上に
モテてるから。」
彼女は笑っていた。
僕は笑えなかった。
第二章 距離
あの日から、
僕は彼女と距離を置いた。
必要な話だけ。
目が合っても、
軽く会釈するだけ。
以前なら笑い合っていた会話も、
自分から終わらせる。
彼女は何度も話しかけてくれた。
「おはよう。」
「お疲れさま。」
「今日は忙しかったね。」
僕は短く返す。
「うん。」
「そうだね。」
それ以上は続けない。
好きにならないために。
好きの反対は、
嫌いじゃない。
無関心だ。
そう思えば忘れられると、
本気で信じていた。
でも、
彼女の笑顔が少しずつ
減っていることには、
気付かないふりをしていた。
ある日の帰り道。
誰もいない廊下を歩いていると、
後ろから聞き慣れた声がした。
「……ねぇ。」
僕は、
ゆっくりと立ち止まった。
第二話
「私、何か嫌われるようなことした?」
へ続く。
