昔の疑問を解く記事。

 

 

名探偵コナンの幾つかの話で披露されている知識。

まず、時計の短針を太陽に向ける。

日本は北半球だから、短針と文字盤の12時との間の方角が真南になる。

と、サラッと聞いて理解できる人はどれだけいたのだろうかと。


今みたいな精密機械の正確な時計がなかった時代、太陽の影で時間を見ていた。

これを「日時計」と呼ぶ。

地面に柱を立てておけば、その柱が作る太陽の影は時間と共に回転する。

柱の周りに、朝6時から18時ぐらいまでの印を文字盤のように地面に彫っておいて、

晴れた日ならこの日時計が使える。雨の日は太陽が出ないので当然使えないが。


日時計は太陽の影が24時間で一回転する。このとき方角との関係はどうなるのか。

ここでの議論では恒星日とか太陽日とか余計なことは考えない。

単純に考えて、正午に太陽がいる方角が真南。この状況を「南中」という。

太陽は24時間で一周し、太陽の影も24時間で一周する。であれば、

日時計の短針が太陽を指している時、文字盤の12時の方角が常に真南。当たり前だ。


では今ここに、日時計とは別に、12時間で一周する腕時計を持っているとする。

要は現代人が普段使う普通のアナログ式腕時計。コナンが持っているのもこれ。

午前11時に、時計の短針を太陽に向けてみよう。

1時間後、短針は文字盤の12時を指すが、太陽は文字盤の11時30分の位置にくる。

なぜなら腕時計は12時間で一周だが、太陽は24時間で一周するから。

 

北半球では太陽は左から右へ動く。腕時計の短針の回転方向と同じ。

 

そしてなおかつ、太陽の一周する速さは腕時計の2倍遅い。

だから11時に短針を太陽に向けた時、

 

11時と12時の中間すなわち11時30分の方角が真南となる。


同じ事を、もう少し考えてみる。

午前10時に時計の短針を太陽に向ける。

2時間経てば短針は文字盤の12時を指すが、太陽は文字盤の11時の位置にくる。

ということは、文字盤の10時を指している短針と、文字盤の12時の中間すなわち、

11時の方角が真南となる。


では、午後だとどうなるか。例えば午後1時に時計の短針を太陽に向ける。

1時間前、短針は文字盤の12時を指し、太陽は文字盤の12時30分を指していた。

言い換えれば、1時間前に文字盤の12時を指していた短針は、

1時間経てば文字盤の午後1時に来るが、太陽は文字盤の午後12時30分の位置に来る。

つまり太陽を文字盤の12時と午後1時との中間すなわち午後12時30分に向ければそこが真南となる。


厳密には、腕時計や掛時計は東経135度子午線の日本標準時の時刻を示していて、

場所によって誤差は出るが、定性的にはここまでの理解でいい。

実用的には方角の目安を知る程度に考えた方がいい。


では、南半球ではどうなるか。

南半球の人にとって地球は、南極天頂から見下ろした時の「時計方向」に自転する。

北半球の感覚でいえば東と西が反転している。

 

だから南半球でも太陽は東から西へ動く。

言い換えれば、北半球では太陽は左から右に動くが、南半球では右から左へ動く。

北半球では左が東で右が西だが、南半球では右が東で左が西。

だいぶややこしいが、最終結論からいうと、

南半球で短針と時計の文字盤の12時との間が示すのは真南ではなく「真北」となる。


といってもそこがコナンの説明で中々腑に落ちない部分。

確かめてみる。

例えば午前11時に短針を太陽に向けてみる。

1時間経つと短針は12時を指し、太陽は10時30分を指す。

ということは、10時30分を太陽に向ければそこが真北…あれ?

短針と文字盤の12時との中間になっていない気がするのだが、

なんか変だ、このやり方は北半球と南半球で本質的に同じなのだろうか?


実は、南半球では北半球でのやり方が通用しない。

南半球では、太陽に向けるのは短針ではなく「文字盤の12時」でなければならない。

なぜか。

実は南半球では、太陽と短針は時間経過で互いに「近づく」ようにする必要がある。


"短針と文字盤の12時との中間が真南(または真北)"


というしくみを南半球でも使う為には、太陽が右から左に動く性質を考慮して、

太陽が文字盤上を「反時計方向」に移動するように考えなければならない。

そうなると、南半球で太陽に向けるのは短針ではなく、文字盤の12時しかない。


例えば、南半球で午前11時に文字盤の12時を太陽に向けてみる。

1時間経つと短針は12時を指し、太陽は11時30分の位置にくる。

この関係さえ利用できればよいのである。

短針の移動量に対し、太陽は2倍遅く移動する。

だから南半球では、短針と文字盤の12時との中間が真北になる。

なぜ真南ではなく真北なのかって、

南半球だろうと北半球だろうと東西南北という方角の定義は変わらないから。

南半球では東西が左右反転している。という事は太陽が見える方角は北になる。


コナンは「日本は北半球だから~」と説明しているが、このニュアンスが謎。

北半球と同じやり方で南半球でもできるのなら、その言い方もまだわかる。

でも北半球と南半球では、太陽に向けるものが異なる。

それなのに、北半球と南半球の事情を同列に扱うような説明をコナンはしている。

それとも、北半球では「真南」を指すことを強調していたのか、

 

あるいは、コナンは頭がいいので、

南半球では北半球とやり方が変わるという仕組みを理解しているのかも知れない。


これだけの内容をコナンはサラッと説明してみせたけど、

あの説明でどれだけの人がなるほどと頷いていたのか今でも疑問。


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サラッとした説明と、わかりやすさが
必ずしもイコールでないのは知ってる。
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