インクの色 | 荒井修のブログ

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以前このブログでも紹介したが、古い懐かしい葉書が僕の引き出しにはいろいろ残されている。

もう故人になってしまった人、もうずいぶん音沙汰のない人、若い時に大変影響を受けた大先輩などが下さった葉書を時を経て読み直すと、当時は読み取れなかった心の襞や奥底を感じ取れるようになっていた。

そしてそれを通り過ぎると、インクの色が気になるようになってきた。

インクの色も年月が経つと退色してきたりするものだが、それだけではなく、同じインクブルーでもペン先の太さによっても、筆圧によっても微妙に変わってくるようだ。

中でも特殊なインクを使っていたと思われる色のものもある。

あの無骨そうな叔父さんが、手作りのDE ATRAMENTISのインクを当時から使用していた伊達男だったんだと思うことも度々あった。

なぜそれが判ったかと言うと、僕の万年筆には、一本にはここのコペルニクスを入れてあり、もう1本にはナポレオンボナパルト入れているからである。今ではさほど珍しくはなくなっているが、当時はかなりの洒落者か変人だったかもしれない。

同じブルーのインクなのに、どこか違うのだ。

この人はなぜこの色を選んだのだろうか?

この太さのペン先は、やっぱり文筆業の人らしく、紙の上の滑りを大切にしていた人なんだろうな。など実に楽しい空想の時間を過ごせるのである。

古い葉書を読み直す時、そんな時を至福と感じられるのは、そんな発見をした時なのである。