下記は弁護士ドットコムから↓
俳優の広末涼子さんが今年4月、静岡県内の高速道路で自動車を運転中に追突事故を起こして同乗者にけがをさせた事件で、過失運転致傷の罪で略式起訴されたことを広末さんの公式サイトが22日、発表しました。看護師を暴行した傷害の容疑については、不起訴となりました。
報道によれば、広末さんは今年4月、静岡県掛川市の新東名高速道路のトンネル内を時速およそ185キロで走行して、前方の大型トレーラーに追突。同乗していた男性に骨折のけがを負わせたとして、過失運転致傷の容疑で書類送検されていました。広末さんは事故後に搬送先の病院で女性看護師に暴行し軽傷を負わせたとして、傷害容疑で現行犯逮捕されていました。
公式サイトで、広末さんの弁護人らは「過失運転致傷事件については通常であれば数日中に裁判所から罰金の納付を命ずる略式命令が出されます。広末涼子氏は、裁判所からの略式命令が出されましたら、速やかにこれに従う予定です。 これにより全ての刑事事件について手続が終了します」とコメントしています。
また「自らの行為を重く受け止め、各事件の被害者の方々に対して多大なご負担とご迷惑をおかけしましたことを真摯に反省」と謝罪しました。
「略式起訴」とは具体的にはどういう手続きになるのか解説します。
●略式起訴は「罰金刑」を科すための簡易な裁判手続き
「略式起訴」とは、略式手続(りゃくしきてつづき)という簡易な裁判手続きを検察官が裁判所に求めることです。
略式手続は、正式な裁判を開かず、書面審理だけで罰金や科料という刑罰を科すためのものです(刑事訴訟法461条〜)。
通常の刑事裁判は公開の法廷で行われますが、略式手続ではこれが省略されます。つまり、法廷で裁判は開かれず、罰金を納付すると手続きが終わります。
●略式起訴の要件とは?
略式起訴のためには、刑事訴訟法461条などにより、主に以下のような要件を満たす必要があります。
100万円以下の罰金刑であること(※1)
被疑者が罪を認めていること
被疑者が略式手続に同意していること
事案が簡明であり、証拠が明白な事件であること
今回の過失運転致傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)の法定刑は「7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」であり、「100万円以下の罰金刑」という要件を満たします。
広末さんが今回略式起訴されたということは、広末さんが事実を認めたうえで、略式手続に同意したということになります。
●略式命令が確定すれば「前科」となる
略式起訴がされた場合、裁判所が書面だけで審理をし、「略式命令」を下します。この略式命令は100万円以下の罰金か科料を下す内容となっています。
罰金刑であっても、刑の言渡しを受けたことには変わりないため、この略式命令による罰金刑の確定は前科となります。
今回の事案では、広末さんはすでに釈放されており、在宅のまま捜査が進められていたそうです。今後は、裁判所から略式命令が郵送され、罰金を納付して刑事手続きは終了する流れが一般的です。
なお、最初略式手続に同意したが、やっぱり略式裁判ではなく、正式に刑事裁判をする、ということも可能です。 略式命令を受けた人は、命令の告知から14日以内に正式裁判を請求することができます(刑事訴訟法465条)。
●広末さんは今後どうなるのか?
罰金の納付をすれば刑事手続は終わります。したがって広末さんはこのまま生活していくことになります。芸能人ですので、事件の影響で出演などに支障がでる可能性はありますし、民事上、たとえば関係企業などから損害賠償を請求されるなどの可能性はありますが、刑事手続については今後の手続きは特にありません。
(※1)なお、法定刑として100万円以上、たとえば「300万円以下の罰金」と定められている事件であっても、宣告刑が100万円以下の罰金であれば略式手続の対象となります(「基礎から学ぶ簡易裁判所の諸手続」岩田和壽/日本評論社、2017年5月p187など参照)。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)