秋広外野手は伸び悩んでいる。

昨季はブレイクして規定打席には届かなかったものの、今季は期待が高かったですよね。

その秋広外野手はネット上で話題になってます。

以下はネット上のスポーツ紙から。

巨人は阿部慎之助監督が就任し、積極的に若手を登用している。萩尾匡也、佐々木俊輔が外野の定位置争いで頭角を現す中、この選手も殻を破ってほしいとファンの期待が大きい成長株がいる。高卒4年目の秋広優人(21)だ。

 昨年は121試合出場で打率.273、10本塁打、41打点をマーク。規定打席に4打席足りなかったが、7月下旬には4試合連続アーチを放つなど、飛躍の年となった。身長2メートルの恵まれた体格からフリー打撃で放つ打球はスタンド上段に突き刺さる。飛距離はチームトップクラスだろう。日米通算507本塁打をマークした松井秀喜氏の後継者として期待され、22年から背番号「55」を背負っている。球団の期待は大きく、昨年オフの契約更改では、推定年俸が5倍以上に増額した。
 今年の春季キャンプでは、打撃練習で臨時コーチを務めた松井秀喜氏から打撃フォームで助言を受けた。グリップの位置が左肩付近まで下がり、スイングに力強さが増した。今年はレギュラーの座をつかみ、長打力を看板にクリーンアップに定着する活躍を――。球団も秋広自身も、明るい未来を思い描いただろう。

 だが、オープン戦は16打数2安打で打率.125、0本塁打と結果を残せず、開幕は2軍スタート。イースタンリーグでも打率.216、0本塁打と胸を張れる成績ではない。ベテラン・梶谷隆幸の故障に伴って今月7日に1軍昇格したが、打撃でアピールしなければファームに逆戻りとなる。

■松井秀喜タイプというより駒田タイプ?

 セ・リーグのある球団の首脳陣は、秋広についてこう分析する。
「強打者になる資質は間違いなく備えている。ただ、彼が松井秀喜さんのような生粋の長距離砲と言われるとどうですかね。僕は中距離砲だと思っています。恵まれた体格で打球を飛ばしますが、柔らかくて器用なんですよね。変化球への対応力が高く、詰まっても逆方向の左前に落とす技術を持っている。イメージとしては駒田徳広さん(元巨人など)に近いかな。打率3割、20本塁打を継続するタイプだと思います。安打の延長線が本塁打で、強引に長打を狙うと彼の良さである柔軟性が失われて、空振りや引っかけた打球が増える。実際に昨年のシーズン終盤からその兆候が見えるようになりました。今年も打撃の状態がいいとは言えない。もちろん何かきっかけをつかめば覚醒する可能性が高いので、警戒はしますけどね」秋広の特徴を表す指標がある。昨年放った111安打のうち、中堅から逆方向の打球が29本で28.7%を占めている。チームメートで本塁打王を3度獲得している岡本和真は昨年140安打のうち、逆方向の打球は15本で15.2%。この数字について、セ・リーグのスコアラーはこう分析する。

「広角に安打を飛ばす打者は難しい球に反応してヒットゾーンに飛ばす。当てる技術が高いので逆方向にも安打を飛ばせるのですが、ホームランを量産するタイプではない。過去の強打者でいうと、横浜の安打製造機として首位打者に2度輝いた鈴木尚典さんが当てはまります。内角打ちの打撃技術は超一級品で外角に落ちる難しい球もヒットにしていましたが、長打を狙う打撃フォームにモデルチェンジしてしなやかさが失われてしまった。打撃は繊細です。秋広も自分が輝ける打撃スタイルを見いだせないと、伸び悩んでしまう危険性がある」

■大田は移籍で重圧から解き放たれた

 「松井秀喜2世」として将来を嘱望された選手は過去にもいた。東海大相模からドラフト1位で入団し、背番号55を継承した大田泰示(現DeNA)だ。スピードとパワーを兼ね備えたスケールの大きいプレースタイルで、将来の巨人を背負うスター選手として注目されたが、1軍に定着できず月日が流れていった。打撃フォームが頻繁に変わり、どうにかしたい思いはひしひしと感じたが、結果が出ない。
 大きな転機は16年オフの日本ハムへのトレードだった。栗山英樹元監督に見いだされて1年目から外野の定位置をつかむと、19年に打率.289、20本塁打、77打点といずれも自己最高の数字をマーク。外野の守備でも強肩と球際の強さで幾度もチームを救い、20年にゴールデングラブ賞を初受賞した。

 大田を取材した当時のスポーツ紙記者はこう振り返る。
「才能を開花させた要因は精神的な部分も大きかったと思います。巨人ではファームで出場すると、心無いヤジが飛んでいた。松井さんのような活躍を求められても、バッターとしての個性が違う。日本ハムに移籍して重圧から解き放たれ、プレーに躍動感を取り戻した。巨人でプレーしていた時と表情が全然違って、自信を取り戻したように感じました」

大田は日本ハムで素質を開花させたが、将来を期待された若手の成長株が1軍で目立った成績を残せず消えてしまうケースが少なくない。かつて、巨人でプレーした元選手は「ファーム慣れ」を危惧する。

「ファームにいてもサラリーマンより良い給料をもらえるし、立派な練習環境やトレーニング施設で不自由がない。1軍でプレーしなければいけない危機感を抱く選手は当然いますが、ファームの環境に慣れて向上心が見えない選手も出てくる。秋広にはそうなってほしくないです」

■強打者の分岐点は4年目

 この元選手は、秋広について気になったことがあった、と続ける。
「1軍昇格した中日戦の前に、共に自主トレを行った中日の中田翔と20分話し込む姿が記事で報じられていました。アドバイスを受けていたのかもしれないが、巨人の首脳陣や選手たちがその光景を見てどう感じるか。結果を出しているならともかく、1軍の当落線上にいる立場であることを考えると、立ち振る舞いに気を付けた方がいい。巨人で活躍してほしい思いはありますが、危機感を持たなければ数年後にトレードで放出される可能性がある。いつまでも期待の若手ではない。新しい選手はどんどん入ってきますし、結果を出せない選手は淘汰される。勝負の世界は厳しいですから」

 まだ高卒4年目、とは言えない。球界を代表する強打者たちの歩みを見ると、高卒4年目が分岐点となっている。岡本は4年目の18年に全143試合出場して打率.309、33本塁打、100打点をマーク。22歳シーズンでの打率3割、30本塁打、100打点は史上最年少記録だった。村上宗隆(ヤクルト)も4年目の21年に打率.278、39本塁打、112打点で自身初の本塁打王を獲得している。そして、松井氏も4年目の96年に打率.314、38本塁打、99打点と前年から飛躍的に数字を伸ばし、11.5ゲーム差をひっくり返す「メークドラマ」で大逆転優勝に大きく貢献。史上最年少でMVPを受賞した。

 秋広は大きく飛躍できるのか。今後の野球人生を占う上でも、重要なシーズンになる。

(今川秀悟)