こちらはBL(潤翔)の妄想小説になります。


苦手な方は御遠慮ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Side 翔
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恋をしました。



まさか自分に限ってないだろうと思っていたけど、それはほとんど一目惚れだった。

彼がこのバスに乗るとふわりと香る空気で気付く。
始発から乗る俺とその3つ後から乗り込んでくる彼。

彼が現れるのはいつも決まって雨の日だった。

晴れた日に何度かバスの窓から自転車を漕ぐ彼の姿を見たことがある。
バスを使う時にはいつも運賃を払っているのを見ていたから、定期を使うつもりはなく基本は自転車なんだと分かった。

初めて彼がこのバスに乗ったあの日から、自分のことを気持ち悪い奴だと思いながらもその姿を目で追ってしまうことをやめられずにいた。


その日俺は、俗にいう“心を奪われる”という感覚を初めて知った。
男なのにすごく綺麗で、まるでどこかの絵画の中から抜け出してきたような人だと思った。
大人びて見えたけど、彼が着崩した学ランを身に纏っていたから一目で学生なんだとわかった。

同い年か、もしかしたら年下。
少し長めの髪には派手な色が入っていて、首にはゴツいネックレス。多分ヤンキー。
周りの何にも興味がなさそうな顔をして、俺のすぐ目の前の吊革に掴まった、その人。

綺麗だけど、コワそうな奴。

関わるつもりなんて勿論なかった。
見てるだけなら害はないだろうとこっそりその横顔を眺めていたら、不意に彼が携帯電話を取り出した。
別に除くつもりはなかったけど、誰かから着信がきているようで少し周りを見渡した後彼は電話に出た。

バスの中は通話禁止だってのに。見た目が良くてもやっぱりヤンキーは駄目だな、なんて勝手に落胆したのを覚えてる。

「もしもし」

ごく小さな声でそう言いながら俯くようにして小さく身を屈めた彼と、物理的に顔と顔の距離が縮まった。

……すっげえ綺麗。


見ているだけで何かの罪にさえなりそうな彼の色気に思わず息を呑んだ。

透き通るような白い肌に、色素の薄い綺麗な瞳。長い睫毛。

マジで人生の勝ち組だな、と思っていたら

「ばあちゃんごめんね、今バスだから……うん、うん。大丈夫だよ。うん、降りたらまたかけるから」

優しく囁くものだから、正直驚いて顔に出ていたかもしれない。

「……はは、うん。じゃあ切るよ」

勝手に悪友あたりからのものだと思ったそれをすぐに切った彼には、まだ電話の向こうにむけていた笑顔が薄っすらと残っていた。


微笑うと尚更……。


直後彼と目が合った。

彼の笑顔に引き込まれかけていた俺がこの時彼から目を逸らせなかったのは、ほとんど不可抗力だ。


だけど時が止まったように感じたのはきっと俺だけ。

相手がすぐに気まずそうに視線を逸らして姿勢を直すと、俺の視界からはもうその表情は見えなくなった。

なんだよ、もしかして良い孫してるような奴なのか……?

さっきの笑顔と相まって、そう思ってしまったらもう駄目だった。
今日見かけたばかりの、誰だかもわからない奴に。


俺は意図も容易く恋に落ちてしまった。