こちらはBLの妄想小説になります。
苦手な方は御遠慮ください。
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数日経って理由が分かった。
あ、翔ちゃんの笑顔に泣きそうになる理由じゃなくて。
あの時イケメンくんが俺を睨んできた理由。
「松潤さ」
その日の昼休み。
思い切って話しかけると、相手はびっくりしたように俺を見上げた。
「あ、ここ座っていい?ってか座らせてもらおー」
松潤──松本潤。入学してすぐにすっごいイケメンがいるって話題になった、その本人。
同級生にとどまらず先輩たちの間でもあっという間に噂は広まって、一時期なんてファンクラブみたいなものまであった。
だけどそのファンクラブができて四か月後のある日、女の子たちみんなで松潤に誕生日プレゼントを送ろうみたいなことをやって……そしてその日にファンクラブは消滅した。
「そういうの迷惑」
廊下に人だかりが出来ていて気になった俺も見てたから知ってる。
松潤は赤い顔をした女の子たちに向かって、これ以上ないくらいに冷たく言い放った。
女の子たちの顔が赤から青に変わって、泣き崩れる子なんかもいたりして。
でも、それで松潤に幻滅してファンクラブがなくなったわけじゃなくて「彼が嫌がることをするのはやめましょう」みたいな松潤護衛隊みたいなのが代わりにできて、表向きアイドルを追いかけるようにキャーキャーはしゃぐ集団は身を潜めたって感じだった。
「…誰?」
不機嫌そうに俺を見る松潤を無視して、彼の前方席が不在なのを確認してから机を挟んだ正面に座った。
去年まで同じクラスになったこともないし、今のクラスになってからもまだ日は浅い。学校の有名人から誰?とか言われても俺は別に傷ついたりしない。
「俺、相葉雅紀。知らない?」
冗談で聞いてみたら
「あー…知ってる。ってか知らないけど、よく名前呼ばれてるし」
そう言いながら俺のちょうど後ろに位置する教室の入り口に視線を送って、そっちを見るよう俺に促す。
振り返ると知らない女の子が立っていて、クラスの奴が何やら話しかけられてた。
「相葉、この子がお前に用があるって」
タイミングよくそいつが俺に声をかけてきた。
ああ、なるほど。
確かに俺よく呼び出しくらってるかも。
こういうパターンもあるけど、他のクラスの男友達とか部活の仲間なんかからもよくこんな風にしてお呼びがかかる。
「あー…、ちょっと待って」
俺は入り口にいる女の子に片手でごめんね、と相図を送ってから松潤に向き直った。
「あのさ、俺この前からずっと気になってて」
「俺そういう趣味ないんだけど」
「え!?…あ、違っ、そういうんじゃなくて」
「いってらっしゃい、モテ男」
「俺ずっと松潤に聞きたいことがあって」
はあ、とでっかい溜息をついて、めちゃくちゃ興味なさそうなオーラを全身から出しながら松潤が首を傾げる。
「何?」
何か癪に障るけど、今聞かないとまたタイミングを逃しそうだし。
「……松潤って」
言いかけて背後で俺たちの会話に聞き耳を立てているであろうさっきの女の子の気配を感じて、慌てて松潤の耳元に口を寄せた。
「松潤て、翔ちゃんのこと好きでしょ?」
本人にしか聞こえないくらいの声でそう囁いた。
その瞬間、俺の顔のすぐ横で松潤が息を呑んだのが分かった。ああ、これは──
「早く来てやれよ!この子ずっと待ってんだけど!」
次の言葉を言おうと口を開くと同時に、さっきのやつに苛立った声で呼ばれた。
咄嗟に席を立って入口へ向かいながら、一瞬振り返った俺の視界に映った松潤は。
さっきまでのしかめっ面なんて吹っ飛んで、まさにポカンとした顔で俺を見てた。すぐに唇をかんで悔しそうに俯いてたけど。
──ビンゴ。
やっぱりね。
そりゃあ、あの時俺を睨みたくもなるわけだよ。
……松潤は、いつから翔ちゃんのことが好きだったのかな。
まあ、いつからにしても、俺のほうがずっとずっと先だけど。