パーーッン!


 長いクラクションを鳴らした霊柩車が走り出す。


 


 誰もがずっと見つめている…


 葬儀場から幹線道路を左に曲がるまで、ただひたすら見ていると左折する霊柩車は見えなくなった…。

 悲しかった。そして寂しかった。でもそれ以上に悔しくてたまらなかった。

 家族…そして子供を残して先輩は逝ってしまった。死を選ぶことは出来ない…それは突然訪れた。そして誰もが避けることは出来ない。必ずその時はくる…。

 
 「松木…帰ろう…」
 俺はすぐにこの場を離れたくなった。あまり話したい気分ではなかった…。


 葬儀場には双子の弟もいた。1度も目を合わせることもなく、距離を縮めることもなかった。干渉せず交じ合うことの無い平行線…これが俺たちにとって必要だ。無駄な馴れ合いすら要らない。そして解決さえしない。それでいい…

 数人の先輩に挨拶を済ませ、一緒に来た松木を車に乗せ走り出す。松木は中学からの同級生だ。

 しばらく走ると
 松木は外の流れる景色を見ながら「俺が死んだら先輩みたいにたくさんの人が来るかな?」と自分に重ね合わせている。

 「心配するなよ。たくさんの人が来る。俺たちもそうだけど、親戚や仕事関係の人たちがたくさん来るよ。」俺は言葉を掛けた。

 
 「でも、俺は自分が死んだら密葬でやる。ごく近い親族と友人だけでひっそりとやりたいんだ。そしてアイツ死んでたよって言われて、墓にでも線香くれればいい。誰にも迷惑掛けず、ごく近い人だけでいい。悲しまれるのも悲しむのも嫌なんだ。だから俺はそれでいい…」

 
 これが俺の最後に相応しい…そう思う…。

 
 
 走馬灯のように巡る青春時代…そして仲間との絆…それはいまも健在だ。そして弟はこの歳になっても体を張って仲間を助けた。


 そこまでしなくていい…

 解決の方法はまだあった。


 
 〜〜〜


 
 記憶は月形刑務所にフラッシュバックする…