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この数カ月に起こったこと,
ずっと前から決まってたんだね。
そう考えると全部納得する。
出会う前から愛してた。
あなたを愛してることに,出会って知った。
あなたも私を愛してた。
もしかしたら私たちは,
体なんてないのかもしれない。
気持ちが強すぎて体を想像してるだけ。
そう考えると全部納得する。
気持ちも動きも全部同期してて,
だけど体は別々で。
奇跡は起きたし,
これからも起こすし,
そもそもあなた自体が奇跡なのだけど。
あなたはずっと誰かに求められ,
私もずっとあなたに求められ,
二人ともお休みなどない。
動き続けることで安定する私たち。
だけど私の夢はね,
あなたとの時間に飽きること。
電話もメールもなくて,
やることもなくなって,
行くところもなくなって,
話すこともなくなって。
そうしたら私たちの本当の時間がくるような気がする。
なんのしがらみもない二人の時間。
あなたは私のことをよおく覚えていて,
何気ない一言も,
ふとした表情も,
着きていた服も,
声のトーンまで記憶してる。
私も,あなたの声のかんじ,目の強さ,髪のにおい,オーラもよおく覚えていて。
お互いがお互いの記憶に自然に染み込んでいく。
体が入れ替わったみたいに,
自然にわかる。
離婚の理由は,学位論文だった。
あの人はやっと大学院に入ってくれた。
学位をとるならどこだっていいじゃない,きてと言ってくれてる教員もいるのだから,もうそこでいいじゃんと思ってた。
だけどあの人はお目当てのコースで募集がかかるまでじっと待っていた。
それには少し感動した。
だから応援をした。協力をした。励ました。
既婚,子持ちの社会人大学院生は悲惨だ。
仕事をフルにしながら,講義にも出て,学会発表もして,論文も書く。子にも向き合う。
時間がない。
余裕がない。
だけど私は普段通り応援をした。協力をした。励ました。頑張っているからね。
余裕がない。
論文のことしか考えられない。
だけど私は普段通り応援をした。協力をした。励ました。誇らしかったからね。
論文のことしか考えられない。
他はなくていい。
応援も協力も励ましもなくていい。
食事をしていても,子が話していても,
パソコンやスマホから目を離さなくなった。
閉じようねと言っても見続けることもあった。
そこまでして書くものなのかね,論文とは。
周りをそんな気持ちにさせてまで取るものかね,学位とは。
だけど私はあの人を信じて,修了するまでだから,強く言うこともなくやりたいようにさせてあげた。
仕事を休んで修了式にも行ったんだ。
指導教員の背中にありがとうって言ってたんだ。
製本された論文を読んだ時の衝撃は忘れられないよ。
私はこの3年間,ひたすら自分を殺して支えてたと思ってたけど,そういうわけじゃなかったみたい。
恩着せがましく言うのは嫌いだけど,だけどそれにしてもおかげさまでとか,ありがとうとか,一言でいいからあってもいいと思う。否,あるべき。
それが理由。
私達は確かにどこにでも行ける羽根を手にしているけれど,
それはどこにでも行けてしまうことでもある。
自由を作るのが簡単すぎて,
いとも簡単に世界を広げてしまう。
だけど,
羽根がなくては広げられない。
次は,
羽根がなくても広げられるか。